「終身刑におびえ、香港市民はネットも自粛」 欧州へ渡った元民主派議員の許智峯氏に聞く

2020年12月31日 06時00分

今月下旬、本紙のオンライン取材に応じる許智峯氏=白山泉撮影

 香港の統制を強める香港国家安全維持法(国安法)が6月30日に成立、即日施行されてから半年。香港当局は民主活動家の周庭しゅうてい(しゅうてい)氏や香港紙創業者の黎智英れいちえい氏らを相次いで逮捕し、立法会(議会)にも圧力を強めている。一斉辞職した民主派議員の1人で、その後、欧州に渡った許智峯きょちほう氏(38)が本紙のインタビューに応じ「中国政府に立法会を支配され、自由に意見を言うことに恐怖を感じる」と訴えた。(上海・白山泉)

◆国家安全維持法の恐怖

 ーこの半年で約40人が国安法違反容疑で逮捕された。
 「同法関連の捜査を行う独立した組織が警察の中に立ち上げられ、市民や政治家が恐怖に陥っている。国安法違反は禁錮10年または終身刑が科される可能性があり、ネット上の言論にまで自粛が広がりつつある
 ー圧力は立法会にもすでに及んでいる。
 「議員の言論の自由は法令で保護されているにもかかわらず、心配する声が広がっている。議場の外での言動も国安法違反に該当してしまう懸念がある。例えば仕事柄、外国の総領事館関係者や団体職員などと会議をする機会が多いが、こうした仕事まで『外国勢力との結託』と見なされるかもしれない

◆最後まで議会に残りたかった

 ー自身も含め15人の民主派が一斉辞職した。議会に残る選択肢はなかったか。
 「議員の中でさまざまな意見があり、私は最後まで議会に残って闘おうと主張していた。大きな転機は中国の全国人民代表大会(全人代)常務委員会が忠誠心のない立法会議員の資格取り消しを香港政府に認める判断をしたこと。これまでにも議員資格取り消しはあったが、裁判所の審理や立法会での討議を経てのことで、北京(中国政府)が直接決定するのは初めてだった。北京の裁量でいつでも議員資格が取り消されることを意味するもので、香港の立法会は北京に直接支配されたことになる」
 ー辞職した議員は今どうしているのか。
 「政党に残って政治活動をする人や、民間人とともに団体をつくって政府に反抗している人もいれば、政治から引退してレストランの経営者になった人もいる。ここまで言論の自由が失われた以上、政権への抵抗をどう続けるかは悩ましい」

◆家族も監視や尾行の対象に

 ー香港を離れる決断をした理由は。
 「議会の中でも前線に立って政府を批判していた私は、既に何度も逮捕されている。次々に起訴されて裁判になれば数年間の禁錮刑を受けることは免れないだろう。一生香港に戻れなくなる決断は重かったが、香港のために自由な言論を続けたいと考えた。また、家族までが警察や親中派市民による監視や尾行をされた。家族を守りたかったというのも理由の一つだ
 ー香港の地位はどうなるか。
 「短期間で金融センターとしての地位が失われる可能性は低いが、世界からの信頼は徐々に低下していくだろう。私が香港を離れた際、香港にある家族の銀行口座が一時凍結された。政府ににらまれた民主派はいつでも金融によって圧迫されうる。こうしたことが本当に中国にとって有利なことなのか疑問だ」

 【略歴】許智峯氏 学生時代に天安門事件の追悼集会に参加したのを機に民主派政党に加入。2011年から区議会議員。16年には立法会議員に選出されたが、今年11月に辞職。12月初旬、国際会議で欧州を訪れた際に会員制交流サイト(SNS)で「香港に戻らない」と宣言。現在は英国で暮らす。香港警察に国安法違反容疑で指名手配されている。

関連キーワード

PR情報

国際の新着

記事一覧