<東京NEWS2020>(8)生活困窮者対策 積極的支援と運用改善を

2020年12月31日 07時06分

寒さに耐えながら、居場所を求めて街中を歩く男性=都内で

 新型コロナの感染拡大で緊急事態宣言が発令された四月以降、ネットカフェなどの休業で居場所を失った人たちに、都はビジネスホテルを提供した。今年五月、ホテルに滞在していた男性(30)を取材したが、再び連絡を取ると、野宿生活をしていた。
 今月上旬の深夜、男性は、ほぼ全ての荷物が入ったかばん二つを抱え、池袋駅近くの商業ビル内の通路に座り込んでいた。「いけないと分かっているんですが、外があまりに寒くて」
 男性は二〇一八年末、やむにやまれない事情から家を出た。以来、バイトをしながら夜、眠る場所はネットカフェなどを利用してきた。嫌なことがあると起きられず延滞料金がかかるので最近は野宿という。
 都のホテル提供は、公園にいた人の話で偶然知り、利用することができた。一年半ぶりのベッドは「幸せでした」。しかし、都がホテル提供の期間を延長したことは区から知らされず、六月上旬に退室した。後になって延長を知り、区に掛け合ったが「お勧めできない」などと言われた。
 支援団体が仲介してくれたおかげで再び利用できるようになり、区からも謝罪があった。区によると、ホテル利用者には延長などを随時連絡したという。担当者は「連絡が万が一漏れたなら申し訳ないし、その後も手違いがあったならおわびするしかない」と語った。
 男性は延長期間をホテルで過ごし、七月上旬に退室した。都のホテル支援はたまたま知ったから利用できたことであり、生活困窮者への周知が不徹底だと痛感したという。男性は「もっと、分かりやすくなれば」とつぶやいた。
 生活困窮者が公的支援を適切に受けられないのは、生活保護制度も同様といえる。困窮者の支援団体によると、福祉事務所の窓口を訪れた人にさまざまな理由を持ち出して生活保護を申請させない「水際作戦」が行われているという。
 このような以前からあった困窮者対策関連の問題が新型コロナの感染拡大の影響で、一気に表面化したといえる。だがコロナ禍は先行きが見えず、住まいや仕事を失う人が増える今、問題を放置することは当然のことながら許されない。
 厚生労働省は先日、ホームページに「生活保護の申請は国民の権利です」と明記し、ためらわずに相談するよう呼び掛けた。一歩前進に違いないが、ようやく、という感も否めない。
 困窮者に対する積極的な支援と、運用面の改善が望まれる。 (中村真暁)
 =おわり

関連キーワード


おすすめ情報