宇宙ごみをキャッチ・・墨田のベンチャー企業が世界初の挑戦 東京の下町から宇宙へ、ファンド設立が後押し 

2020年12月31日 20時54分
 国家プロジェクトとして進められてきた宇宙開発に、民間企業などが次々と進出している。米国では2020年11月に民間の宇宙船が野口聡一さんらを国際宇宙ステーションへ運び、国内では宇宙関連企業に出資する宇宙フロンティアファンドが大手企業などによって設立された。明けて21年、東京の下町から宇宙への挑戦が相次ぐ。
 同ファンドの出資を受けた東京都墨田区のベンチャー企業「アストロスケール」はこの春、人工衛星を打ち上げ、世界初の民間による宇宙ごみ除去事業に踏み出す。地球の軌道を超高速で飛び交う宇宙ごみは1億個以上。その回収は宇宙開発で最大の課題とされ、本社のある墨田区も全力バックアップで臨む。

宇宙ごみ除去実証衛星「ELSA-d」のぬいぐるみを手に話すアストロスケールの岡田光信CEO=東京都墨田区で

◆胸に秘めてきた思い

 「宇宙は君達の活躍するところ」。15歳の時、米航空宇宙局(NASA)のスペースキャンプに参加し、現地で訓練していた宇宙飛行士の毛利衛さんから手書きのメッセージを受け取った。以降、最高経営責任者(CEO)の岡田光信さん(47)は宇宙への思いを胸に秘めた。
 「今度は自分の番だと思った」。東大農学部を卒業後、大蔵官僚や経営コンサルタントなどを経て13年にシンガポールで創業、15年に拠点を墨田区に移した岡田さん。子どもたちへの教育や地域貢献ができる喜びを語る。

◆秒速7キロで飛び交うごみ

 JR錦糸町駅から徒歩約10分、住宅街に本社と工場を構える同社が開発した世界が注目する人工衛星「ELSA―d(エルサディー)」。先月11日、ロシアに向け発送され、今年3月にロシアのロケット「ソユーズ」でカザフスタンから打ち上げられる。
 人工衛星は天気予報や交通管制など、いまや暮らしを支える情報に欠かせない。その脅威となるのが、役目を終え宇宙空間を漂う人工衛星やロケット、その部品だ。銃弾の10倍以上の秒速約7キロで地球軌道を回り、その数は10センチ以上が2万3000個以上、10センチ以下が1億3000個以上とされる。衝突すれば人工衛星に致命的なダメージを与える。

宇宙ごみのイメージ図=JAXA提供

 今回の人工衛星は家庭用洗濯機ほどの大きさ。宇宙ごみに接近し強力な磁石で捕獲、抱きかかえたまま大気圏に落ちて消滅させる。パートナーシップを組む宇宙航空研究開発機構(JAXA)は「成功したところは世界のどこにもない」と期待を寄せる。

◆「ものづくりのまち」

 5カ国で事業展開し、NASAやJAXA出身などの技術者ら160人以上が集う最先端企業が、なぜ墨田に拠点を置いたのか。岡田さんは「国内で本社候補地を探す中で、製造に関してすんなり受け入れられる素地があった」と説明。高い技術を持ち、歴史がある町工場が集積する「ものづくりのまち」に引きつけられたという。
 そんな企業を墨田区も支援。事業拡大に伴う本社の移転先は、土木事務所跡地の区有地に、区が推進して2023年に新設される産業振興拠点「すみだコ・ラボ・ツリー(仮称)」。区内外の宇宙産業やものづくり企業が集積し、同社が中核となり、子どもたちが宇宙を身近に感じられる展示や教育にも力を注ぐ。区の担当者は「ポストコロナを見据え、ものづくりで地域を元気にする起爆剤になれば」と期待を寄せる。

◆夢を次世代へ

 「未来は創るもの。私たちにできるのは、世界最先端の現場、すなわち、ここが宇宙につながっていることを見せること」と岡田さん。墨田区が宇宙開発の世界の本場になり、宇宙への夢を次世代につなぐ場となるよう願っている。(長竹祐子)

関連キーワード

PR情報

社会の新着

記事一覧