居酒屋談義で始まった人工衛星、打ち上げへ 東京の会社員らが「趣味の宇宙開発」

2020年12月31日 20時55分
 「趣味の宇宙開発」を掲げ、宇宙好きのサラリーマンや町工場の経営者らによる手作りの超小型人工衛星が2021年、米国から打ち上げられる。18年の「ゼロ号機」に続く渾身の1号機は、地球を背景にした人工衛星の「自撮り」をミッションにしている。

超小型人工衛星の自撮りのイメージ図=リーマンサットスペーシズ提供

◆地球の「自撮り」が悲願

 「みんな宇宙に行き、そこから地球を見たい願望がある。自分たちの衛星が飛ぶのも見たい。自撮りは悲願だった」。社団法人「リーマンサットスペーシズ」の代表で、東京都江戸川区で金属加工業を営む宮本卓さん(42)は目前に迫った夢を語る。
 14年春、東京・新橋の居酒屋で生まれたプロジェクト。システムエンジニアの三井龍一さん(37)ら宇宙好きのサラリーマン5人が「自分たちで宇宙開発をやりたいよね」と盛り上がったのが始まりだった。

アームとカメラ機能を付けた超小型人工衛星=リーマンサットスペーシズ提供

◆製作費は数百万円

 一般的な人工衛星の開発と打ち上げの費用は数百億円規模だが、約10センチ四方の超小型衛星は数百万円で製作でき、民間利用が急増していた。「超小型衛星なら宇宙に手が届く」と、イベントやネットで参加者を募り14年11月、社団法人を設立した。
 最初に目指したのは、地球との通信がミッションの超小型衛星「ゼロ号」実験機。開発担当は専門知識を一から学び、仕事帰りや週末に作業。秋葉原やネット通販で部品を調達し、宮本さんの町工場で製作した。
 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の性能テストで合格。18年9月に無人補給機で国際宇宙ステーションへ。翌月、日本の実験棟「きぼう」から宇宙空間に放出された。
 今回の1号機の開発は、その直後から始まった。「自撮り」のため、伸縮するアームを搭載し、先端にカメラを取り付けた。新たな姿勢制御装置なども使用する。実験機は通信に失敗したため、耐久テストを念入りに繰り返した。
 2年がかりで完成した1号機は、性能テストや手続きを終え、20年12月にJAXAに引き渡した。三井さんは「みんなの思いを宇宙に渡すことができ、感無量の瞬間だった」と振り返る。

超小型人工衛星をつくるメンバーたち=東京都江戸川区で(リーマンサットスペーシズ提供)

◆仕事はさまざま、700人の仲間

 仲間は現在、約700人に増え、サラリーマンが7割。学生や自営業者、看護師、大工など多彩な人材が集まる。理系のエンジニアばかりではなく、営業マンや経理など業務も幅広い。衛星開発のほか、関係機関との調整、広報などのグループに分かれ、役割を分担する。
 今後は、さらに2個の衛星の打ち上げを予定し、月面走行車の開発なども進めている。宮本さんは「限られたすごい人だけが宇宙に関わるイメージがあるが、草の根で誰でも可能になる環境をつくりたい」と夢見ている。(宮本隆康)

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