【独自】福島で国内最大級のソーラーシェアリング 放棄された農地を太陽光発電とブドウ栽培に活用へ

2021年1月3日 20時36分
 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から10年になるこの春、太陽光を発電と農業の両方に活用する大規模なソーラーシェアリングの事業が、福島県二本松市内で動きだす。出力は4メガワットと、ソーラーシェアとして国内最大級。政府が2050年までに二酸化炭素(CO2)排出ゼロを掲げる中、耕作放棄地などを再生可能エネルギー発電に活用できるかも課題。事業が軌道に乗れば、再エネ拡大を後押しすることになる。(池尾伸一)

◆シャインマスカットの上へパネル

 安達太良山あだたらやまを望む二本松市内の丘。広大な土地は雪で真っ白だ。東京ドームより広い6ヘクタールの農地に、3月からシャインマスカットの苗を植える。その上をパイプで支えられた9360枚の太陽光パネルが覆う。
 「眠っていた土地からおいしいブドウと、880世帯分の電気が生まれるのです」。事業を主導する近藤恵さん(41)が言う。

ソーラーシェアリング設備建設予定の農地で語り合う近藤恵さん(左)と塚田晴さん=二本松市内で

 ソーラーシェアは農地に太陽光パネルを間隔を置いて設置、農業と並行して発電する手法。農業収入を補う利点もあり、政府は13年から耕作継続を条件にパネル設置を認めている。

◆発電会社と農業法人を自ら設立

 この耕作放棄地をめぐっては、再エネ開発業者が固定価格買い取り制度に基づき、1キロワット時あたり36円で20年間、大手電力に売る権利を政府から取得した。だが、耕作者が見つからず放置されてきた。

 固定価格買い取り制度 再エネを拡大するため2012年から開始。太陽光、風力など再エネの電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束。費用は電力利用者に転嫁している。買い取り価格は太陽光発電の場合、当初の1キロワット時あたり40円から、最近では13円(事業用太陽光発電、10~50キロワット未満の場合)に下げられた。政府は23年から固定買い取りを廃止し、市場価格に補助を上乗せする方式に切り替える方針。

 あまりにもったいないと近藤さんが活用を計画した。近藤さんは市内で農業を営んでいたが原発事故の影響で廃業。その後、同県飯舘村などで太陽光発電建設に携わり、農業・発電両方の経験をもつ。「みやぎ生協」(仙台市)や、シンクタンク「環境エネルギー政策研究所」(東京都新宿区)の出資も得て、発電会社を設立。業者から権利を買収し、事業が動きだした。

 近藤さんは農業法人も設立し、ブドウや食用油の原料「エゴマ」を栽培。電気は、二酸化炭素排出ゼロの店舗運営を目指すみやぎ生協が購入。発電からの収益は農業法人で働く人々の所得上乗せなどに充てる。

◆「新しい農業で復興に」

 福島の農業は原発事故で作物が放射性物質で汚染されるなど大打撃を受け、その後も風評で苦戦している。近藤さんはソーラーシェアで農業復興を加速させたいとの思いがあり、共感する地元出身者らが加わる。
 農業法人の社員として就職した塚田はるさん(19)は原発事故時、小学3年生。地元の有機農家の田植えを手伝い、農業に親しんでいたが、「放射能による風評で農家の人たちが苦しむ姿が悲しかった」。その後は家族で兵庫県に避難し、福島から離れていたが、農業高校卒業を機に故郷で農業をやるため戻ってきた。福島では風評でコメや果物の価格が安くなりがちなものの、「エネルギーも作物もつくる新しい農業ならやっていけることを示し、復興に役立ちたい」と話す。

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