<歩む・震災10年>(下)再エネ 地産地消図る 元町職員の中之条パワー社長・山本政雄さん

2021年1月4日 07時54分

再エネの地産地消で地域活性化を目指す中之条パワーの山本政雄社長=群馬県中之条町で

 群馬県中之条町の中心部から車で約三十分。山林内のカーブを曲がると視界が開け、太陽光パネルが並ぶ。町が発電事業を行うメガソーラー(出力一メガワット以上)だ。「国有林内の遊休地を借りて活用しています」。この発電所などを電源に電力供給する「中之条パワー」の山本政雄社長(65)が説明してくれた。
 町などが出資して二〇一五年十一月に設立。町内のメガソーラー四カ所などで発電した電力を公共施設や住宅などに供給し、エネルギーの地産地消に取り組む。
 きっかけは一一年の東京電力福島第一原発事故。事故を受け、町は再生可能エネルギー推進を打ち出し、一三年に民間と共同出資で一般財団法人中之条電力を設立。自治体新電力の先駆けとなった。その後、子会社の中之条パワーが企業などへの電力小売り事業を継承した。
 「原発事故の影響は町にもあった。ヤマメなど川魚が放射性物質に汚染されるなどして苦労した人も多い。町の自然を生かした再生可能エネルギーで地域活性化を図る。それが原点」。そう振り返る山本社長は町職員出身。震災後に設置された町エネルギー対策室長として再エネに関わった。
 当初は町役場や小中学校など公共施設三十カ所に供給した。一六年四月の電力小売り自由化を経て現在は公共施設約四百五十カ所、一般住宅や店舗などが約二百カ所になる。供給電力量は一六年度の四百四十四万キロワット時から一九年度は千二十六万キロワット時に伸びた。
 顧客拡大や再エネ普及に知恵を絞る日々は続く。一七年から町のふるさと納税の返礼品として電力を贈っている。都内や横浜市などからこれまで約六十件の申し込みがあった。「再エネへの関心や期待の高さを感じる」と手応えを明かす。
 町と協力し、住宅用太陽光発電の設置者から余剰電力を寄付してもらう試みも始めた。固定価格買い取り制度の買い取り期間が一九年から順次満了することが背景。寄付者には電力量に応じて町が町内で使える地域通貨を贈る。「まだ申し込みは少ないが、期待している。地域に貢献し、地域と共に歩む会社として成長したい」
 今気に掛かるのが、政府が打ち出した「五〇年までに温室効果ガス排出実質ゼロ」方針。「原発は廃止できないという理由付けにしてほしくない」と懸念する。「原発は事故を起こすと影響は計り知れず、放射性廃棄物という負の遺産も残す。将来の世代に責任を持たなければいけない」
(石井宏昌)

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