高い重症化リスクに「毎日緊張の連続」 高齢者施設が苦慮する新型コロナ対策

2021年1月6日 05時50分
 新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、重症化リスクの高い高齢者が入居する介護施設で、1度に複数の感染者が出る「クラスター」発生が増え続けている。各施設ともウイルス流入を防ぐ対策を取るが、限界もある。過去にクラスターを経験した施設は「早期の一斉検査が重要」と自治体に態勢整備を求めている。(原田遼)

高齢者施設内に張られた感染対策の10カ条。職員への注意点が記されている=東京都江東区の特別養護老人ホーム「北砂ホーム」で(同施設提供)

 「毎日緊張の連続です」。東京都江東区の特別養護老人ホーム「北砂ホーム」の和田敬子施設長が話す。施設では職員がマスクとフェースシールドを着け、食事や入浴を介助する。6畳の休憩室は原則1人で使用し、更衣室の利用も最大2人までに制限している。
 「職員同士の会食を自粛しましょう」「感染の可能性があれば、所属長に相談しましょう」。壁や扉に張られた「対策10カ条」には、注意点が記されている。
 職員たちは感染予防に全力を尽くしている。それでも、和田さんは「第1波」の経験も踏まえ、「無症状の人からでも感染する。リスクをゼロにするのは難しい」と説明する。

飛沫(ひまつ)防止にアクリル板が設置された食堂のテーブル。一度の使用は2人までに制限=東京都江東区の特別養護老人ホーム「北砂ホーム」で(同施設提供)

◆感染拡大を防げるかのカギは「早期の一斉検査」

 4月21日、発熱する入居者が相次いだ。保健所の指導でPCR検査を実施すると、9人の陽性が確認された。「頭が真っ白になった」(和田さん)
 運営法人「あそか会」が傘下の病院と連携し、自主的に施設の全職員と利用者計180人を検査すると、さらに無症状の職員6人を含む51人の陽性者が見つかった。入院調整などに忙殺されて混乱したが、和田さんは「もし一斉検査をしなかったら、全員感染するなど大変なことになっていたかも」と振り返る。
 荒川区の介護老人保健施設「ひぐらしの里」では6月、入居者や職員32人のクラスターが発生した。入居者1人が発熱したが、担当医は誤嚥ごえん性肺炎を疑って経過観察としたため、PCR検査をしたのは5日後。当時の大下忠事務長は「1人目の検査をすぐに保健所にお願いしなかったことが悔やまれる」と話す。

◆高齢者福祉施設ではクラスター580件

 厚生労働省によると、1月4日時点で、高齢者福祉施設でのクラスターは累計で580件。11月16日時点から約2.1倍に増えた。同省は施設に陽性者が1人出た場合は職員、利用者を一斉検査するよう自治体に求めている。しかし、一部の高齢者施設から「発熱患者がいるのにPCR検査が受けられない」という相談が届くという。
 過去に感染者が少ない地域では検査態勢が十分に整っていない傾向がある。同省担当者は「検査能力だけでなく、検体輸送の態勢拡充や機器購入などを充実させるよう自治体を支援していく」と話している。

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