難民キャンプを襲った新型コロナ 路上生活に終わりが見えない

2021年1月6日 05時50分
 地中海を見下ろすイタリア北西部ベンティミリャ郊外の高台。海風が肌寒さを感じさせる先月中旬、数百メートル先のフランス国境から追い返された難民らに、国際ボランティアが温かいバーベキューを振る舞っていた。

昨年12月、イタリア北西部ベンティミリャで、支援団体による朝食の振る舞いに集まった難民たち

 「いつたどり着けるのか、運に任せるしかない」。西アフリカ・マリ出身のコリー(16)は、海を見つめながらつぶやいた。故郷の村が襲撃されて家族とはぐれ、親戚がいるフランスを目指しているという。
 イタリアに上陸した難民の多くは、仕事が豊富なフランスに入国するため、この街を目指す。しかし伊仏国境は道路も鉄路も警備が厳重。街には難民申請が認められず、仏警察に追い返された人たちが暮らす難民キャンプがあったが、各国のキャンプで新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が相次いだため昨年7月末で閉鎖。常時数百人が路上生活を強いられている。

◆テロ事件後の国境警備強化で追い打ち

 さらに10月末、国境に近い仏南東部ニースのキリスト教会で男女3人が刺殺されるテロ事件が発生。実行犯が難民船に紛れてイタリア経由で入国したチュニジア人だったと判明すると、仏政府は国境警備をさらに厳しくした。ニースの支援団体「ADN」代表のテレザ・マフェイ(71)は「難民と支援する私たちへの目線はさらに厳しくなった」と話す。
 欧州連合(EU)加盟国への難民流入は、新型コロナ第1波が押し寄せた昨春に各国が国境を閉鎖したためいったん激減したが、夏ごろから再び増加。不安定な政治、経済情勢がコロナ禍でさらに悪化したアフリカ諸国からの難民船が地中海を挟んで向かい合うイタリアやスペインの島しょ部に次々と押し寄せている。
 伊内務省によると、昨年の難民上陸は3万人超で、前年の3倍以上。新年はさらに増える可能性がある。マフェイは「欧州全体で難民を受け入れる枠組みづくりを急ぐべきだ」と訴える。

昨年12月、イタリア北西部ベンティミリャで、フランス憲兵隊の国境検問を受けるイタリアから来た車列

◆難民受け入れ進まず 制度見直しも停滞

 EUの欧州委員会は昨年9月、到着国が難民申請や保護の手続きを担う現行制度を改め、全加盟国が受け入れ人数や送還時の財政負担を分け合う新制度を提案した。しかしポピュリスト政権のハンガリーやポーランドが反対し、イタリアやギリシャなど水際諸国は受け入れの分配基準が不平等だとして改善を要望する。
 受け入れに積極的なドイツが議長国を務める年内の合意を目指したがまとまらず、新年に持ち越された。域内に130万人が流入した2015年の欧州難民危機からの課題だった現行制度の見直しは一筋縄ではいかない。
 温暖な地中海沿岸でも冬の夜は冷え込みが厳しい。「路上生活を続ける難民たちから死者を出さないように頑張り続ける」。朝のベンティミリャ駅前で難民たちに朝食を振る舞っていた支援団体「カリタス」代表のマウリツィオ・マルモ(53)はこう言って、足早に作業へ戻っていった。(敬称略、ベンティミリャで、谷悠己、写真も)

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