<神津島新聞>世界が認めた星空 島民が輝かせる

2021年1月6日 07時10分
 東京には62もの区市町村がある。それぞれの街には何があり、どんな人たちが住んでいるのか。担当記者が「編集長」になって、一つの街を掘り下げる。

赤崎遊歩道から望む星空。天の川がくっきりと見える=古谷亘さん提供

 ネオン輝く眠らない大都市・東京に、漆黒の闇夜にきらめく満天の星があった。「天の川なんて当たり前」。そう豪語する地元の人たちの話に期待を膨らませ、夜空を見上げると…。そこには天然のプラネタリウムが広がっていた。

島南部のありま展望台は、星空ガイド古谷亘さんもおすすめのスポットだ

 都心から約百八十キロ離れた伊豆諸島・神津島(こうづしま)。米国のNPO「国際ダークスカイ協会(IDA)」が美しい星空を保護する取り組みをたたえる「星空保護区」に昨年十二月、認定された。国内では沖縄の西表石垣国立公園(石垣市・竹富町)に次ぐ快挙。認定発表翌日の夜、島の観光ガイド中村親夫さん(70)に案内してもらった。
 集落の中心部から車で数分、太平洋を望む断崖絶壁にある島南部の三浦湾展望台。車を降りた瞬間、無数の星に包まれた。三百六十度、どこを見ても星、星、星。赤く輝く火星にすばる、そして天の川。しばらくすると月が出て、その強い光が星々をのみ込んでいくような光景に息をのんだ。それでも、中村さんいわく「今日はまあまあ。一、二月はもっとよく見える」。
 この星空を冬季の観光の目玉にしようと、村は保護区認定を目指してきた。認定にはIDAが定める屋外照明の形状などをクリアし、住民の理解と賛同を得なければいけない。
 前田弘村長(66)は手始めに、島内全五百八十四基の街灯の改修に乗り出すも、国内には光が上空に漏れず、環境に優しい暖色系という基準を満たす街灯は製造されていなかった。「まさかゼロから作ることになるとは…」と苦笑いの村長。大手電機メーカーの協力で特注の街灯を製造し、七割以上をすでに改修した。

島北部の赤崎遊歩道。透明度の高い海に木製の遊歩道から飛び込める

 「村の美しい星空を守る光害(ひかりがい)防止条例」も制定。日没一時間以降の屋外看板の点灯禁止など生活に影響しかねない内容だったが、住民説明会では、歓迎する声が大多数だったという。
 認定条件の一つでもある星空ツアーも充実。世界的に有名な星空スポットであるニュージーランドでガイドを務めた経験がある古谷亘(わたる)さん(32)が、豊富な知識で島の星空の魅力を伝えている。
 「状態が良ければ、海外の星空と比較しても遜色ない。島民の意識が高まれば、もっと魅力は増す」と古谷さん。カーテンを閉める。不要な電気は消す。そんな小さな積み重ねが星を輝かせる。「島民が島の星空に誇りを持つことが大切。認定はスタートラインです」。今後、島の星空はさらに美しさを増すかもしれない。

◆神々が集まる島

 伊豆諸島の中間に位置する神津島は、各島の神々の会議場だったという神話があり、その昔「神集島(かみあつまりじま)」とも呼ばれていたという。
 こんな神話もある。伊豆諸島が出来上がったころ、神津島のシンボル天上山(てんじょうさん)の池の水を各島に分配する会議があったが、神々の集まりが悪く、神津島への先着順で配ることになった。寝坊して最後に来た、ある島の神様が水が少ないことに逆ギレ。池に飛び込み暴れ回ったことで、島全域に水が飛び散り、神津島は湧き水が豊富になった−。
 島の集落には、この「水配り神話」のモニュメントがそびえ立つ。実際、島南部にある多幸湧水(たこうゆうすい)は天上山に磨かれた水が湧き出ており、水量も豊富。まろやかでおいしく、島民も水をくみにくるほどだ。
 ガイドの中村親夫さん=写真=は「島に伝わる神話も神津島の魅力の一つ。太古のロマンを感じてほしい」と話す。

◆神津島村

 伊豆諸島にある火山島。島中央部の天上山(標高572メートル)は、背の低い植物や大小の岩塊など森林限界のような風景が広がり、観光客にも人気。人口は1883人(昨年12月1日現在)で、島にある都立神津高校には離島留学で入学する生徒もいる。
★天上山には、まとまった雨が降ると出現するハート形の池=写真、神津島観光協会提供=がある。数日で水がひくため、島民もなかなか見られないほど激レアだ。
★島北部の通称「五色浜(ごしきはま)」。色がついた石が多数あるが、持ち帰るとたたりがあるとか…。島民はもちろん信じている。
★島の主要産業は漁業で、漁獲高は年間10億円超。中でもキンメダイ漁が盛んで、神津島港の食堂で食べた煮付けは絶品だった。

◆編集後記

 星も山も魅力的な神津島だが忘れてはいけないのが、やはり海。集落の目の前には真っ白な砂浜が約八百メートルも続く。島北部にある入り江には遊歩道が設けられ、数メートルの高さから抜群の透明度を誇る海へと飛び込むこともでき、シュノーケリングも楽しめる。豊富な魚種が釣れる釣り人の聖地でもある。
 昼は海、山のアクティビティーに夜は星。いつか神津島を遊び尽くしたい。
 文と写真・西川正志
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