施設内クラスター 先手先手で予防 職員が濃厚接触→陽性 名古屋の老人ホーム

2021年1月6日 07時51分

隔離フロアのエレベーター前で物品の受け渡しをする職員。別フロアで働く職員は黄色いテープの内側に入らない=名古屋市で

 各地の高齢者施設で新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)発生が相次いでいる。一方で、感染者が出たものの、独自のマニュアルに沿って対応し、感染拡大を食い止めた施設もある。高齢者は重症化しやすく、施設の対応に命を左右されかねない。専門家は「クラスター発生を防ぐため、常に先手の対策を打つことが大切」と指摘する。 (佐橋大)
 名古屋市東区の住宅型有料老人ホーム「あんしんせいかつ葵」。七階建ての建物に約八十人の高齢者が暮らす。呼吸器の病気や糖尿病などの基礎疾患があり、介護が必要な人が多い。
 昨年十一月、夜勤明けで帰宅した男性介護職員から、同居人が新型コロナに感染したと報告があった。施設側は、濃厚接触者となったその職員に翌日から自宅待機を指示。併せて、厚生労働省の指針を参考に同二月に作った対応マニュアルに基づき、職員が働いていた施設三、四階への立ち入りを制限する「フロア隔離」の態勢に入った。

◆担当フロア隔離 個別消毒し洗濯

 両階で働く職員十人は屋外の非常階段から出入りし、他の職員との接触を遮断。食事や物品を運ぶカートは外部からの搬入用と隔離フロア用を分け、職員らが各階のエレベーター前で物品を受け渡すようにした。洗濯物は一人分ずつ袋に入れて消毒してから、各階で洗濯した。
 三、四階の入居者三十四人は二週間、入浴中止とし、代わりに職員が体を拭くようにした。入浴時はマスクを外すため、感染拡大の機会になりうると判断したからだ。食事はそれぞれに個室で取ってもらった。
 隔離を始めた翌日、自宅待機していた職員も陽性と分かった。入居者や同僚に濃厚接触者はいないとされたが、施設側はクラスター発生防止を徹底するため、保健所と協議して、職員が主に担当していた入居者ら二十五人へのPCR検査実施を決定。その日のうちに、普段から連携する在宅診療所で検査を行い、翌日に全員が陰性と判明した。

◆入居者にPCR 「偽陰性」も警戒

 しかし、フロア隔離は続けた。本当は感染していても検査では陰性と判定される「偽陰性」も起こり得るからだ。隔離を解いたのは、隔離開始から二週間後。新型コロナの潜伏期間を考慮したという。入居者が感染した場合に隔離するため、施設二階の一部の入居者を別の階に移して「感染者居室」を設け、職員用の防護服なども準備していたが使わずに済んだ。
 対応マニュアルは策定後、職員がインターネット上で常に見られるようにして周知徹底を図った。一方、自粛生活で入居者が居室に閉じこもりがちになり、歩行など日常生活動作(ADL)の低下もみられた。運営会社メグラス社長の中島加織さんは「感染対策とADLの維持をどう両立するかが課題」と指摘。「自分も感染するかもしれない」とストレスを抱えながら働いていた職員らの心のケアも必要だと感じたという。
 施設では市中感染の広がりに応じて四段階に分け、入居者の外出や家族との面会、外部来訪者の制限などの対策を決めている。感染症に詳しい愛知医科大教授の三鴨広繁さんは「スタッフが濃厚接触者だと分かった段階で、フロアやスタッフの隔離を始めるなど、先手を打つことが感染を広げないために大切」と強調。「高齢者施設の感染対策は『やりすぎか』と思うくらいやった方がいい。やるべきかどうか迷う対策は全て実施すべきだ」と語る。

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