障害者就労施設ピンチ コロナ禍で平均2〜3割減収 「国からの支援要件 緩和を」

2021年1月7日 07時21分

ワイン用のブドウの木の手入れをする人たち=愛知県小牧市で

 新型コロナウイルスの影響で、障害者の働く施設の多くが経営難に苦しんでいる。外出やイベントの自粛などで商品が販売できず、企業からの仕事の受注も減っているためだ。国の支援制度を活用できない施設も多く、要件の緩和などを求める声が上がっている。 (佐橋大)
 愛知県小牧市の丘陵地にある「小牧ワイナリー」。社会福祉法人「AJU自立の家」(名古屋市)が運営する就労継続支援B型と生活介護の複合施設だ。知的障害者ら三十四人がブドウの栽培からワインの醸造までに携わっている。冬の間も、病害虫を防ぐため、ブドウの木の皮をむく作業などで忙しい。二〇一五年五月のオープン当初から働く須藤誠史さん(25)は「仕事は楽しい。ワインが売れるとうれしい」と話す。
 一九年度はワインの販売や併設のカフェで約四千七百三十五万円の売り上げがあった。本年度は昨年十二月までで約千八百五十万円と前年同期より56%減少。例年出店していたイベントが相次いで中止になる中、昨年六月にオンライン販売サイトを開くなどの対策を打ってきたが、減収をカバーしきれないままだ。
 一方、施設側が利用者に支払う工賃は月平均四万円と、コロナ禍前から変わらない。B型事業所の一八年度の全国平均額約一万六千円を大きく上回る水準で、法人内の資金繰りで何とか維持しているという。「利用者が障害年金と工賃で自立して生活する理念を崩したくない」と、ワイナリーのサービス管理責任者の芳賀俊さんは力を込める。
 障害者を支援する事業所の全国連絡会「きょうされん」は昨年、就労継続支援事業所の生産活動状況などを調査。緊急事態宣言中の五月は、回答した三百三十一カ所のB型事業所のうち81・6%が前年比で減収となり、平均減収率は35・7%だった。減収の理由として、食品加工は「販売機会の減少」、清掃は「移動の自粛でバス清掃の仕事がなくなった」、軽作業は「企業の生産活動の低下で委託される仕事が激減した」などが挙がった。工賃も七割近い事業所で減額し、減額率は22・1%だった。
 昨年十月時点でも、調査対象となった二百カ所のB型事業所のうち62・5%が減収に。平均減収率は21・2%だった。きょうされん事務局員の松本尭久さんは「厳しい状況が続いている。国は抜本的な対策を」と訴える。
 国は、コロナ禍で減収した就労継続支援事業所向けに「生産活動活性化支援事業」を設けている。生産活動による収入が前年同月比で50%以上減ったことや、連続する三カ月の収入が30%以上減ったことなどが要件だ。地元の県などに申請して認められれば、生産活動の固定経費や、ホームページ制作など販路開拓の費用として、一事業所に最大五十万円が支給される。
 ただ、きょうされんの調査で、減収したものの、要件に該当せず、支援を受けられない事業所も多いことが判明。「要件が厳しすぎる。支援額も不十分で、先が見通せない」と松本さん。また、作業日が減り利用者が減収になった場合、A型事業所は休業手当の一部を助成する「雇用調整助成金」の対象になりうるが、B型にはそうした仕組みがない。きょうされんは、工賃などを個別に補償する制度の創設も提言する。
<就労継続支援事業所> 通常の就労が難しい障害者が雇用契約を結んで働き、原則最低賃金が適用される「A型」と、雇用契約を結ばず工賃を受け取る「B型」の2種類があり、作業内容は事業所によって異なる。一般企業への就労を目指す障害者が必要な訓練を受ける「就労移行支援事業所」もある。

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