<2021渋沢流 今に生きる心>(5)男女格差解決 埼玉から リーダー講座「豊かな社会に」

2021年1月7日 07時32分

修了生の実践事例を聞く「女性リーダー育成講座」の一コマ=いずれもさいたま市の「WithYouさいたま」で

 「人に役立つことをするのは大変だと思う。『やってよかった』のか、それとも『足を踏み入れるんじゃなかった』と感じるか」
 昨年十二月、さいたま市内であった「女性リーダー育成講座」。前年度修了生と交流する回で、受講生から質問が上がった。修了生の大野まり子さん(46)は、立ち上げたシングルマザー支援などの組織での活動について「自分が悩んだ経験や知識が提供でき、つらかったころの自分もいやされている。ライフワークにしたい」と語り、「やりたいこと」を形にしようと奮闘中の女性たちを励ました。
 講座は県男女共同参画推進センターの主催。政治や地域活動などで意思決定の立場に就く女性を増やすことを目指し、知識を伝えるだけでなく修了後も実際の活動につながる支援をする。「日本で物事を決めるのは、今もほぼ男性ですから」。講座を監修する国立女性教育会館客員研究員、中野洋恵(ひろえ)さん(64)は、このような場が必要な背景を語った。

「女性の働きやすい社会は男性も働きやすい」と話す中野さん

 女性を教育し、社会で活躍してもらう−。同じことに、百年以上前の日本で渋沢栄一も取り組んでいた。幾つもの女子教育機関の設置を支援し、国内初の女子大学校である現日本女子大の設立では多額の寄付のほか生徒募集のため新潟、長野県を行脚し講演もした。
 女性は男性の庇護(ひご)下で良妻賢母として生きるとされた時代。特に女子大の設立は高等教育に踏み込むもので「生意気になる」「時期尚早」など世の反発はすさまじかったようだ。啓蒙(けいもう)思想家で家庭内の男女平等を提唱した福沢諭吉が主宰する新聞にも「無益の骨折」と批判が載った。
 それでも渋沢は尽力。渋沢史料館(東京都北区)の井上潤館長は「幕末を生きた人なので、もともとは女性はつつましく、と思っていたが、欧米を見、専門家に学び、徐々に認識を変えた。時代はこんなに変化したのに女子教育が進まなくていいわけがない、と考えるに至った」と分析する。
 晩年に刊行された著書「論語と算盤(そろばん)」では、「人類社会で男子が重んずべき者なら、女子もやはり社会の半分を負って立つ者だから男子同様、重んずべき者」と論じ、人口の半分だけでなく両方を活用する社会づくりを説いた。「現代の男女共同参画へつながる考え方。実現の難しさは分かりながら、未来を見て、大きな一歩を推し進めた」と井上館長は評価する。
 今、女性は教育を受ける権利も参政権も獲得し、その未来は達成されたかのようだが、相変わらず男女格差は大きく、再び世界から取り残されようとしている。男女平等度を数値化する世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数で日本の順位は年々下がり、二〇一九年は百五十三カ国中、百二十一位。特に政治と経済分野が低く、改善著しい他国と差が広がっている。
 埼玉県も、女性が占める割合は県議が15・1%、会社や役所の管理職は14・2%、自治会長は4・8%にとどまる。変化のスピードを、埼玉からもっと上げたい、と中野さんは言う。
 講座には熱意あふれる女性が集まる。受講者の一人は「まさにこうなりたい、と思う人の話が聞けた」と目を輝かせた。修了者からは二人の地方議員も生まれており、県内に女性議員のいない議会はなくなった。
 中野さんは「渋沢と同時代の埼玉には、日本初の女医・荻野吟子(一八五一〜一九一三年)がいた。渋沢の周りにも優秀な女性がいて、その力を伸ばそうと考えたのかもしれない」と思いをはせる。性別にかかわりなく持てる力を伸ばせれば「豊かで希望を持てる社会になる」。 (前田朋子)
 =おわり

関連キーワード

PR情報

埼玉の新着

記事一覧