危険を冒し「死の道」からフランス入国目指す難民たち テロ事件受け国境警備強化

2021年1月7日 12時01分
 難民船でイタリアへ入国したアウイサウイ容疑者がニースでテロ事件を起こしたことで、フランス政府は国境警備を強化した。昨年12月中旬に伊仏国境を取材すると、事件前から多くの難民たちが伊側へ押し戻されている実態が垣間見えた。(パリ・谷悠己、写真も)

昨年12月、イタリア北西部ベンティミリャの国境検問所。後方の切り立った崖の奥に「死の道」がある=谷悠己撮影

◆アフリカ系、強制的に下車

 イタリアからフランスへの入国を目指す難民たちの多くは地中海に面した伊北西部ベンティミリャに集まり、列車やトラックの荷台に隠れてニースなど仏南東部への移動を試みる。
 記者がベンティミリャ発ニース行きの列車に乗ると、国境を越えた最初の駅で10分近く停車。仏警察が乗り込んできて乗客一人一人に声を掛け、アフリカ系とみられる乗客20人ほどが強制的に下車させられた。
 道路の国境でも武装した仏憲兵隊が車を1台ずつ止めて身分証を確認していた。

イタリア北西部ベンティミリャで、フェンスが破られた国境沿いの線路。周囲には難民が使い古した衣服が散乱していた=谷悠己撮影

 地元住民によると、警備が手薄になる深夜に線路を歩いて仏側へ渡ろうとする難民もいる。フェンスが曲げられ線路に侵入できる地点があり、線路沿いの茂みには使い古した衣服や靴、歯ブラシなどが散乱。前夜に難民たちが過ごしていたとみられる臭気を感じた。
 警備が最も手薄なのは高台を走る高速道路沿いにできた獣道。だが、道中には切り立った崖が待ち構える。命を落とす難民もいるため、このルートは「死の道」と呼ばれている。
 地元の難民支援団体「ポーポリ・イン・アルテ」によると、仏側の厳しい対応が始まったのは欧州連合(EU)内に130万人が流入した2015年の「欧州難民危機」がきっかけ。ニースのテロ事件後はさらに警備隊の数が増強され、危険を冒しても死の道を利用する難民が増えたという。

◆「テロ対策に効果はないのでは」

 団体代表のマリアパオラ・ロッティーノさん(54)は「警備を強化してもテロ対策に効果はないのでは」と話す。国境周辺には自力で入国できない難民から金銭を徴収して手助けする「パッサー」がたむろする。資金のあるテロリストは国境突破のノウハウを蓄積した彼らを活用し、容易に入国している可能性がある。
 ベンティミリャ駅前で出会ったスーダン出身の難民アリさん(22)は何度も列車での入国を試みては追い返されたという。「テロが起きた話は難民仲間から聞いた。一部のテロリストのせいで困っている自分たちが入国できないのなら、とても悲しい」と話した。

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