緊急事態を再宣言 納得と共感得られるか

2021年1月8日 07時28分
 「この厳しい試練を乗り越えたい」。最初の緊急事態宣言が出た昨年四月、社説でこう呼び掛けた。その後も試練は続く。あらためて危機感を共有し、重ねた経験を生かし、困難と向き合いたい。
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 政府が新型コロナウイルス特別措置法に基づく二度目の緊急事態宣言を東京都と神奈川、千葉、埼玉三県を対象に発令した。東京は既に「感染爆発」の状態といっていい。一都三県でも感染拡大が止まらず、地方にも波及している。医療態勢を守るためにも、拡大を食い止めねばならない。

◆対策は限定的に実施

 再宣言は、法的根拠のない活動の自粛要請では感染拡大を止められないとの判断からだろう。
 宣言を出したからといって、それが感染拡大の防止に直接結び付くわけではない。実効性ある対策をどれくらい強く、広く実施できるかが重要になる。
 再宣言では、飲食店を中心に営業時間の短縮要請、外出自粛、テレワークの推進、イベントの開催規制などが強化される。
 会食の場である飲食店は企業内や医療機関、学校などよりクラスター発生数が多い。そこでの感染が家庭や医療・福祉施設に広がることがこれまでの分析で分かっている。飲食店を重点的に規制することはやむを得ないだろう。
 ただ、協力金などの経営支援が不十分との声がある。さらなる上乗せも検討すべきだ。
 一方、最初の宣言時のように「人との接触八割削減」といった強い規制は見送られた。店舗へは休業を求めない。小中学校の一斉休校は除外された。宣言期間は一カ月だ。菅義偉首相は「限定的、集中的に行うことが効果的」と強調した。
 確かに、これまでの経験から感染リスクの高い活動が分かってきてより効果的な対策を取れるようになった。

◆危機感が伝わるのか

 だが、政府の対策分科会の尾身茂会長は緊急記者会見で、流行を低減させる期間を「一カ月未満では至難の業」と述べた。専門家からは感染拡大を抑えるには、最初の宣言時のような強い対策でも二カ月必要との指摘もある。経済活動との両立の必要性は理解するが、今回の対応で感染防止効果がどこまで見込めるのか疑問が残る。
 対策が限定的だと危機感が正確に伝わりにくくなる。若者を中心に「感染しても軽症で済む」との認識が広がっているように見える。対策が確実に効果を上げるためには対策に取り組む国民が政府の説明に納得、共感して足並みをそろえた行動ができるかどうかにかかっている。
 分科会は対策のカギとして政府、自治体、社会が「一体感」を持てるかどうかが重要と提言した。
 「Go To トラベル」は旅行を促す一方で、外出自粛を求めるなど対策の方向が見えにくく混乱を招いた。
 一時停止の判断でも権限や役割分担を巡り政府と自治体との連携が不十分だった。
 尾身会長は「国、自治体のリーダーは自らも汗をかくから、みなさんもと呼び掛けることが極めて重要だ」と述べた。逆に言えば、一体感のなさへの危機感があるのだろう。対策の先頭に立つ首相や首長は重く受け止めるべきだ。
 「より強いメッセージを考えた」と言う首相の姿勢も理解に苦しむ。再宣言発令に当たり国会で説明すべきなのに出席しなかった。国会報告は国民に理解と協力を求める場のはずだが、これでは「強いメッセージ」が伝わらないのではないか。
 政府の対策に納得と共感を得るには、必要な情報を迅速に的確に公開する姿勢が不可欠だ。
 緊急事態と判断した根拠や、状況がどう改善したら宣言を解除するのか。政府には「入り口」と「出口」を明確に示す責任がある。それなしに社会は危機感を共有できない。
 感染状況が深刻ならば、首相はなおさら正直に自身の言葉で語るべきだった。宣言発令を表明した七日の会見では「厳しい状況であり大変な危機感を持っている」と述べたが、共に困難を乗り越えようと国民に寄り添う姿勢は感じられなかった。
 政府は特措法の改正案を国会に提出する方針だ。事業者への支援強化など喫緊の対応が求められるが、十八日の通常国会召集まで待たねばならない。対応が後手では国民の協力を得られないと国会は自覚すべきだ。

◆重ねた経験の共有を

 私たちにはこれまでの闘いで得た経験がある。「三密」回避やマスク、手洗いが感染防止に役立つ。一定の治療薬がありワクチンが開発された。まだ不十分だが検査・検疫態勢の強化は進められている。積み重ねた経験を共有しつつ困難を乗り切りたい。

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