生きづらい経験、武器に 『滅びの前のシャングリラ』 作家・凪良(なぎら)ゆうさん(47)

2021年1月10日 07時00分
 昨年、『流浪の月』で本屋大賞を受けた注目の書き手。受賞後第一作となる書き下ろしは、人類滅亡を突きつけられた人々の最後の一カ月を描いた。
 地球に小惑星が衝突する予報が出たという設定で、物語が進むにつれて世界中が秩序を失っていく。多く人の死につながる重いテーマだが、もともと「相反する要素を交ぜ、軽重のバランスを取りたいタイプ」。一人一人が希望に向かって救われる過程を軸にした。
 ストーリーは、学校でいじめられている高校生の友樹や、高根の花の同級生・雪絵らを中心に進む。<出口のない未来ごと、もうどかんと一発ですべてチャラになればいい>と願う友樹のように、それぞれが苦しみを抱える。
 自身の作品で疎外感を抱く人々を多く描いてきた。「自分が感じてきた生きづらさの反映でもある。それは、作家として武器にもなる」。今作でも、死を前にした登場人物たちが、それまでの人生を帳消しにはできないなりに、ささやかな生きる意味を見いだしていく。
 市井の人々をつづる中盤までと違い、いよいよ滅びに向かう終章は、スター歌手を中心に据えた。「大きな希望にしたかった」。一人の人間としても描きつつ「外に向けて表現できる存在でないと、この小説のテーマは締めくくれない」と、個人の枠に収まらない超越的な存在とした。
 二〇〇六年に、男性同士の恋愛を描くボーイズラブ(BL)小説の作家としてデビュー。愛読者だった編集者の誘いで、一七年に初の一般文芸作『神さまのビオトープ』を書いた。それ以降、「書きたい物を書いて」と言ってくれる編集者にも恵まれ、順調に新作を重ねてきた。
 自身のBL作品は、まちの書店に置いていないことがほとんどだったが、今では自分の著書が、書店に平積みされるようになった。「道が開かれたような感じ」。今も、BLと並行して執筆している。
 読者を引きつけるため、作品の冒頭からインパクトのある要素を盛り込むのは、BLで身に付けた工夫。だが「癖でもある。本当は読者をもっと信頼して、じっくり読んでもらうような書き方ができないと」と課題でもあると気付いたという。「衝撃的な出来事がなくても、ぐいぐい引きつけて読ませる物語を書いて、殻を破りたい」
 中央公論新社・一七〇五円。 (松崎晃子)

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