使用済み核燃料の搬出先探し時間切れ…白紙になった関西電力の福井県内原発再稼働

2021年1月10日 06時00分

福井県の桜本宏副知事(右)に中間貯蔵施設の候補地を提示できないことを報告する関西電力の松村孝夫副社長=県庁で

 福井県内にある関西電力の三つの原発で出た使用済み核燃料の搬出先が決まらない。関電は、県に約束した県外の候補地提示を10年以上先送りし、自力での提示を事実上断念。搬出先の提示が前提だった新たな原発再稼働も、暗礁に乗り上げた。電力業界と国が支援に回るが決着点は見えない。 (今井智文、栗田啓右、小川慎一)

◆2020年内に提示のはずが

 昨年12月25日、関電の松村孝夫副社長は福井県庁で「しっかりと報告することができない状況で、心からおわびする」と桜本宏副知事に頭を下げた。2020年内に使用済み核燃料の搬出先を示す、という約束を果たせなかった。
 関電は約束破りを繰り返している。1990年代から県に核燃料の搬出先の提示を求められ、当初は中間貯蔵施設の稼働を「2010年ごろ」と回答。その後「18年に計画地点を示す」に変わり、それができないと「20年を念頭にできるだけ早い時期」へ先送りした。昨年末には、ついに「早めに」となった。
 福井県に3原発を集中させる関電は、原子炉建屋内のプールに使用済み核燃料を保管中。各原発が順調に稼働した場合は5~9年でプールが満杯になり、順次動かせなくなる。核燃料の搬出先確保は死活問題だ。

◆候補地で反対相次ぐ

 関電の搬出先探しは難航した。候補地とうわさされた和歌山県白浜町が核燃料の持ち込みを禁じる条例を制定し、打つ手がなくなった。
 そこに浮上したのが、青森県むつ市にある東京電力と日本原子力発電の中間貯蔵施設を、電力各社で共用する案だ。昨年12月17日、大手電力会社でつくる電気事業連合会(電事連)が梶山弘志経済産業相に報告し、支援を取り付けた。
 関電がむつ市の施設を使う案は以前から検討されていたが、18年に報道されると市の反発で頓挫した。今回は業界と国が支援に乗り出し、関電の森本孝社長は「積極的に参画したい」と前のめりとなった。
 しかし、状況は好転しない。電事連は翌18日に経産省幹部とむつ市を訪問したが、宮下宗一郎市長は「市は核のごみ捨て場ではない」と共用ありきの議論に応じない姿勢を強調。使用済み核燃料を再利用する核燃料サイクル政策が破綻し、一度受け入れれば行き場がないと懸念したからだ。

◆見えぬ決着

 共用案の早期実現が見通せなくなり、昨年12月21日に調整されていた関電社長と福井県の杉本達治知事の面会は、一転取りやめに。副社長と副知事の面会では「むつ市」という言葉は一度も出なかった。
 関電は5月までに、運転開始から40年を超えた美浜3号機と高浜1、2号機の再稼働を計画している。ただ、県から求められていた核燃料の搬出先を提示せず、再稼働計画は事実上白紙となった。
 杉本知事は1月8日の会見で「事業者や国の動きを見守りたい」と、関電から提示がない限り、再稼働の議論を始めない姿勢を示した。電事連、国と青森県、むつ市という「第三者」の話し合いがカギを握るも、先行きは不透明だ。

◆「原発敷地内に」の声も

 こうした状況に、美浜3号機の再稼働に同意した美浜町議会の竹仲良広議長は「原発敷地内に貯蔵施設をつくるのも一つの方法」と話す。地元では稼働するかが経済を左右するだけに代案の検討を求める声も上がるが、慎重意見も根強く、打開策にはなりそうにない。

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