ゴーストレストランって? 「1つのキッチンで25店分」 コロナ禍で急増中

2021年1月10日 06時00分
 客席がなく、キッチンで調理した料理を宅配専門で販売する飲食店「ゴーストレストラン」が東京都内で急増中だ。新型コロナウイルスの感染が拡大する中、店舗型の飲食店より開業費用が安く済むことが背景にある。首都圏に緊急事態宣言が再発令され、今後の利用者増も必至。ただ同じ料理人が作っているのに複数の「専門店」を名乗る店があるなどの問題点も指摘されている。 (原田晋也)

◆間借りして調理、利用者には見えない店舗

 「1つのキッチンで25店分の料理を調理している」。東京都新宿区のゴーストレストランで働く店員が明かす。25店のうち4店はオムライスやローストビーフの「専門店」を名乗る。注文を受けるスマートフォンのアプリにも「専門店」と掲載されている。
 ウーバーイーツや出前館などのアプリで注文を受けた店が、間借りしたキッチンで調理するゴーストレストラン。米国や中国で数年前に始まったとされ、実態が見えにくいため「ゴースト(幽霊)」と呼ばれる。利用者にはアプリに載る店の情報が全てだ。

◆本当に「専門店」なの?

 このため1つのキッチンでカレーとうな丼を調理してもアプリでは「カレー店」「うなぎ店」と違う店での掲載が可能。独立した店に見せることで、利用者の目に触れる機会を増やすことができる。
 ただ「専門店」の記載には問題があるとの指摘もある。景品表示法に詳しい成真海弁護士は「専門店として特定の料理を専門に扱う店なら、それだけおいしいと訴えかけることになる。実際は違うとなれば、景品表示法に違反する可能性がある」と指摘する。

◆保健所にもつかめない実態

 食物アレルギーへの懸念もある。アプリ上ではアレルギー物質を含まない料理の専門店に見えても、アレルギー物質を含む他の料理を同じキッチンで調理すれば、混入の危険性がある。
 保健所が確認するのは、食品衛生責任者を決め適切に衛生管理しているかだ。新宿区保健所の担当者は「法律にゴーストレストランの定義はなく営業の実態は把握していない」と話す。

隣り合わせでキッチンが並ぶ「KitchenBASE 新宿神楽坂」=東京都新宿区で

◆「専用ビル」も登場

 人気の高まりを受け、都内にはゴーストレストランキッチンだけが入る「専用ビル」も誕生している。昨年10月に開業した「KitchenBASE(キッチンベース)新宿神楽坂」。5階建てのビルには21のキッチンが入る。焼き肉弁当などを販売する安藤英幸さん(49)は「店舗型より初期投資が少なく参入しやすい」と話す。
 このビルに1つのキッチンで多数店を出す人はなく、記者が見た各キッチンは清潔だった。キッチンベースの運営会社「SENTOEN(セントウエン)」(東京)の山口大介社長(28)は「1つのキッチンあたりのブランドが多いと品数が増え、料理を提供するまでの時間が長くなる。1つに特化してやっているところが強い」と説明した。
 調査会社エヌピーディー・ジャパン(東京)の調べでは、昨年の宅配店全体の売り上げは前年比44%増が見込まれる。山口社長は「市場規模は5年で5倍に拡大する」と予想した。

関連キーワード

PR情報