<望 ~都の空から>東京駅 「保守」と「前衛」二つの顔

2021年1月10日 07時05分

日暮れとともに高層ビル群の明かりが浮かび上がる東京駅周辺。後方は東京スカイツリー=本社ヘリ「おおづる」から(伊藤遼撮影)

 東京駅には二つの顔がある。赤れんがの駅舎と皇居を石畳で結ぶ「丸の内口」。そして、南北にそびえるガラス張りのビルの間が帆の形をした巨大屋根でつながった「八重洲口」である。
 八重洲口はかつて「駅裏」と呼ばれていた。昭和初期の東京風景を好んで描いた洋画家松本竣介(1912〜48年)に「橋(東京駅裏)」という一枚がある。題材は誰も歩いていないコンクリートの橋。背後に工場の煙突が見える。都心でありながら、うら寂しさを感じさせる場所だったのか。
 「『裏』というのは暗い意味ではない」。作品を所蔵する神奈川県立近代美術館学芸員の長門佐季さんが説明する。関東大震災の復興事業で架けられた橋は、最先端のモダニズムのデザインを取り入れていた。「新しい都市のイメージを『裏』という言葉に託したのではないでしょうか」
 早世の画家が見ていたのは、丸の内の「保守」に対抗する八重洲の「前衛」だった。川が埋め立てられ、橋が消えた八重洲では今、東京タワーよりも高い日本一の超高層ビル「トーチタワー」の建設が計画されている。 (浅田晃弘)

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