[こたつをつけたはなし] 埼玉県熊谷市 内山恵美(41)
2021年1月10日 07時42分
◆わたしの絵本
◆300文字小説 川又千秋監修
[ただいま] 愛知県刈谷市・保育士・47歳 佐藤見知栄
「ただいま」
私は、この言葉が好きだ。なぜなら家族が帰ってくるからだ。
「いってきます!」
走り出すランナーのようにドアを開け、外の世界へと踏み出していく。
今日も無事に帰ってこられますように、と姿が見えなくなるまで見送るのは、私の毎朝の日課だ。
今日は、どんな顔で帰ってくるだろう。
元気の良い声で「ただいま!」と帰ってくる日もあれば、下を向いて、その日あったであろう出来事を想像させるような「ただいま…」の日もある。
「ただいま」の一言には、その日あったことが全て詰め込まれている。
「お帰りなさい。お疲れさまね」
肩にポンと手をのせる。
「さぁ、あったかいご飯を食べようね」
<評> いつも何げなく口にする、しごく単純な日本語のひとつ。ですが、その一言に連なっている出来事や思いは、決して単純ではありません。あたたかな食卓を囲んで、じっくり話してもらいましょうか。
[戦力外通告] 三重県桑名市・無職・75歳 森山岩夫
肌寒さを感じ始めると、この文字が新聞紙上に現れる。
野球をはじめ、プロスポーツの各チームは、この時期にすでに来シーズンの戦力構想を練るようになる。
夢と希望にあふれて入団した選手の中には、数年後に戦力として「わがチームでは必要としない」との通告を受ける者もいる。
プロの厳しさとはいえ、実に残酷な知らせである。
そのことをスポーツに関心のない妻に話すと「役に立たない者はチームから追い出されるわけ? かわいそうね〜」と素っ気ない言葉が返ってきた。
(役に立たなくなると追い出される、か…)
話す相手を間違えたなと後悔しつつ、何だか背筋に薄ら寒さを覚えた。
とりあえず、明朝のゴミ出しは進んでやろう。
<評> 家族はワンチーム! 団結して助け合い、支え合う精神が何より大切。プレーが自分勝手で、貢献度が低いと判断されれば当然、厳しい評価も。来季の生き残りをかけて、必死の自己アピール?
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