<板橋新聞>イタリアとの交流40年 「板・イタ物語」のルーツは?

2021年1月11日 06時31分
 東京には62もの区市町村がある。それぞれの街には何があり、どんな人たちが住んでいるのか。担当記者が「編集長」になって、一つの街を掘り下げる。

カフェ「アリカ」からイタリア料理を紹介する小山晋さん(中)とアレッシオ・ボネッリさん(右)

 板橋区を歩くと、あちこちでイタリアに出合う。東京五輪・パラリンピックでは同国のホストタウンになり、さまざまな交流事業を展開しているが、そのルーツはボローニャ市の絵本原画展だったことをご存じだろうか。交流が生まれて今年で四十年。両都市の歩みを追う「板・イタ物語」の一ページをめくってみよう。
 「Cin cin(乾杯)!」
 昨年十二月中旬、カフェ「アリカ」で、区文化・国際交流財団がイタリア文化を知るオンラインイベントを開いた。店主の小山晋さん(54)と近所に住む常連客のイタリア人アレッシオ・ボネッリさん(39)のトークを交ぜながら、ボローニャを代表する料理「ボロネーゼ」などを紹介した。
 イタリア旅行を三十回ほど重ねてきた小山さんは、三年半前に店をオープン。友好都市であることから、ボローニャ料理も提供してきた。アレッシオさんは「板橋は住みやすく、人も優しい。友達もたくさんいます」と笑顔を見せた。

ボローニャ国際絵本原画展の図録をめくる松岡希代子さん

 物語の始まりは、一九八一年に区立美術館で開かれたボローニャ国際絵本原画展。ボローニャ市での児童書見本市に合わせて開かれるイベントだ。オープン間もなかった区立美術館はコレクションが十分でなく、すでに原画展を開いていた兵庫県の西宮市大谷記念美術館に提案されて開催した。館長代理の松岡希代子さん(59)は「美術館は当時、大人の作品を飾るもの、という考えがあり、絵本原画展は珍しかった」と説明する。
 以来、両都市の代表者が行き来し合う関係に。九三年からは見本市の事務局から世界の絵本が同区に寄贈され、二〇〇四年に「いたばしボローニャ子ども絵本館」が開館。〇五年には友好都市協定を締結し、民間交流も進んだ。
 五輪でイタリアのバレーボールチームの練習場所になる小豆沢(あずさわ)体育館周辺では、一九年から住民たちが歓迎を表すひまわりを植栽している。苗を提供する区内唯一の花の生産農家「マイフェイバリットガーデン」代表の松沢智昭さん(49)は絵本で始まった両都市のつながりについて「多様な分野に広がり、さらに新たな出会いを生み出している」と話す。

イタリアとの縁を結び、今につながる区立美術館のボローニャ国際絵本原画展=同館提供

 二〇年はコロナ禍でイタリアで見本市も原画展も開催できなかった。それでも、関係者同士で連絡を取り合い、八月に同区で原画展が実現。これが世界初お披露目となった。児童書見本市イグジビション・マネジャーのエレナ・パゾーリさんは、こう言葉を寄せた。「長い友情と協力関係がいかに重要でかけがえのないものであるかが、証明された」

◆「植村冒険館」リニューアルオープン

 世界で初めて五大陸最高峰の登頂を達成した冒険家の植村直己さん(一九四一〜八四年)の生誕八十周年となる今年、活動の軌跡を伝える「植村冒険館」が区内で移転しリニューアルオープンする。

リニューアルする植村冒険館のイメージ図(区提供)

 現在の冒険館は九二年、同区蓮根(はすね)で開館。植村さんの装備品や活動写真などを展示するが、常設展示室がなく手狭だった。

 そこで今年十二月、植村さんが暮らしたアパートがあった仲宿商店街近くの区立東板橋体育館内に新冒険館をオープン予定。面積は現在の倍の約三百六十平方メートルで、高画質の映像シアターも設ける。整備費の一部は、ネットによるクラウドファンディングで調達。運営は公益財団法人植村記念財団。

植村直己さん(1978年撮影)

 体育館の改修工事を進めている区の担当者は、「子どもたちに、この場所から植村スピリットを知ってもらいたい」と期待している。

◆板橋区

 東京23区の北西部に位置し、面積は32.22平方キロメートル。人口は57万284人、世帯数は31万5833(昨年12月1日現在)。観光キャラクターのりんりんちゃんは、区の花のニリンソウの妖精がモチーフで、葉っぱの帽子をかぶっている。
★新1万円札の肖像に選ばれた実業家の渋沢栄一は、区内にある都健康長寿医療センターの前身・養育院で約50年間院長を務めた。センター前にある渋沢の銅像=写真、同センター提供=は区登録文化財。
★板橋に関わりがない人にはさっぱり面白くない地域の面白情報を発信するサイト「いたばしTIMES」は昨年から動画に進出、ユーチューブで地域の魅力を発信している。
★地名の由来の板橋=写真=は実在する。でも板ではない。

◆編集後記

 日本大生産工学部の中澤公伯(きみのり)教授(47)は二〇一六年三月から一年間、ボローニャ大で客員研究員を務めた。板橋区とボローニャ市が友好都市であることや、区と日本大が連携協定を結んでいることなども縁となり、帰国後はボローニャ大の研究者を自身の研究室に受け入れたという。中澤教授が「人的な交流も広げてきた」という両都市のつながりが深まり続けることを期待している。
 文・中村真暁/写真・安江実、中村真暁
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