派遣も広がるテレワーク 進む、企業の意識改革

2021年1月11日 07時40分
 新型コロナウイルスの流行を機に、テレワークが浸透した昨年。七日の緊急事態宣言発令に伴い、東京都を含む一都三県では、再びテレワークの徹底が求められている。そうした中、就業場所を定めた契約上の問題などを理由に、正社員に比べ難しいとされてきた派遣社員にも、テレワークは少しずつ広がっている。 (佐橋大)
 派遣社員のテレワークを阻む要因の一つは、派遣会社と派遣先が結ぶ労働者派遣契約だ。そこには、派遣社員の勤務地や業務内容、勤務時間などが細かく記され、内容を見直すには時間がかかる。労働組合関係者によると、昨年四月の緊急事態宣言発令直後は、この契約を理由に、派遣社員だけに出社を求めるケースが目についた。
 しかし、コロナの終息が見えない中、派遣先の意識は変わりつつある。人材派遣の業界団体でつくる人材サービス産業協議会が六月、派遣社員を受け入れている企業・団体二千百四十七にテレワークを認めるかどうかを聞いたところ、「認める」が63・4%。「認めない」は16・7%、未定は19・8%にとどまった。
 同協議会は理由として、契約の内容にかかわらず、感染拡大を防ぐことが最優先された点を挙げる。さらに、追い風となったのが、四月施行の改正労働者派遣法だ。同法は「同一労働同一賃金」を掲げ、正規と非正規の不合理な格差を禁じている。加えて、派遣社員を受け入れる企業には適切な就業環境の維持も義務付けており、「感染リスクを避ける配慮が必要」と各社が認識したことも大きい。
 事務系の業務を担う人材派遣が多いリクルートスタッフィング(東京)は二〇一九年から、出勤日の一部をテレワークにする「出勤オフ派遣」を派遣先に提案してきた。自身の病気治療や家族の介護など事情のある人が、長く働けるようにするのが狙いだ。ただ、利用者の割合は昨年一月時点で1%。だが、五月末には48%、約二万五千人がテレワークになった。三十代の女性派遣社員は「社内の連絡もメールなどでやりとりすれば問題ない」と話す。
 いわば「緊急避難」的に派遣社員にも広まったテレワークだが、同社スマートワーク推進室室長の平田朗子さんによると、可能にしたのは情報ネットワークの整備が進んだことだ。事務系の場合、業務は書類作成などが多いが、パスワードを設定すれば社外からでも作業でき、情報が漏れる危険も少ない。派遣社員のテレワークを認めた五百社を対象にした同社の調査では、33・2%が「業務効率が良くなった」と回答。「悪くなった」と答えた企業15・6%に比べ、インターネット上でファイルを共有できるクラウド化などを進めている割合が高かった。
 契約の内容を変更する企業も出てきている。オフィス家具や事務用品の製造・販売を手掛ける「プラス」(東京)はその一つだ。昨春、契約を改定した上で、それぞれの業務にかかる時間を洗い出し、一人一人に割り振る量や内容を調整。平田さんは「正規、非正規に関係なく、テレワーク導入には業務の『見える化』が大切」と指摘する。
 ただ、導入の割合は職種や地域で差があるのが実情だ。協議会の調査によると、IT系職員の89・8%が派遣社員のテレワークを「認める」としたが、現場に出る必要がある医療・福祉系は27・6%。事務系は73・7%。地域別では首都圏の70・7%に対し、東海地方は53・5%だった。製造業が盛んな東海地方は工場で働く派遣社員が多い点などが理由とみられる。契約内容の見直しに加え、こうした差をどう埋めるかも課題となりそうだ。

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