元慰安婦訴訟 外交通じた問題解決を

2021年1月12日 07時36分
 韓国・ソウル中央地裁が元従軍慰安婦訴訟で、日本政府に賠償を求める判決を出した。悪化している日韓関係にさらに深刻な影響を与える可能性もある。冷静に対応し、外交解決の道を探るべきだ。
 裁判の争点は「主権免除」だった。国家は他国の裁判権に服さないという国際法上の原則で、長く絶対視されてきた。
 近年、国家の商業的行為や人道問題などには適用されないとの考えも広がっている。その範囲はまだ明確ではない。
 今回の判決は、慰安婦被害について「反人道的な行為であり、主権免除の適用外」だとし、日本政府の責任に踏み込んだ。
 日韓間ではこの問題を巡り、二〇一五年に合意に達している。日本が責任を認め、元慰安婦の支援事業に十億円を拠出した。
 不十分な部分があったにせよ、両国が歩み寄った結果で、実際に支援も行われた。
 今回の判決は、この合意を何も評価していない。これでは政府間の信頼関係がなりたたない。
 この判決の背景には、文在寅(ムンジェイン)政権の姿勢がある。被害者の声が反映されていないとして一五年の合意を否定し、財団を解散した。
 元徴用工を巡る韓国の裁判でも、これまでの解決努力を考慮しない判決が出た。問題をこじらせないためにも、過去の合意に立ち返り、補充する方が望ましい。
 司法判断だけを尊重すれば被害者救済につながるのか。韓国政府も、よく考えてほしい。
 日本側の対応も十分ではなかった。「問題は解決済み」として裁判への関与を拒否。判決後には菅義偉首相が直接、「この訴訟は却下されるべき」だと批判した。
 慰安婦問題では、ドイツの首都ベルリンの公有地に慰安婦を象徴する少女像が設置され、日本政府は地元に撤去を求めた。
 威圧的な発言や行動は、日本が人権問題に冷淡だという印象を国際社会に与える。過去への反省にも、疑問を持たれかねない。
 まずは今回の判決内容を十分検討し、誤認があるなら膝を交え、丁寧に反論すべきだ。
 韓国の同意が前提となるが、国際司法裁判所に「主権免除」の是非を仰ぐのも方法だろう。
 北朝鮮は、今月開いた党大会で「国防力強化」の方針を打ち出した。今後、日米韓の三カ国が、共同で対処する必要がある。
 昨年十一月以来、日韓の政府間交流は活発化している。この流れを止めてはならない。

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