コロナ禍で震災体験をどう伝承していくか 各地で来訪者減少、オンラインで「リモート語り部」も

2021年1月12日 12時00分
新型コロナの影響で3・11メモリアルネットワークの報告会もリモート開催となった=宮城県仙台市で

新型コロナの影響で3・11メモリアルネットワークの報告会もリモート開催となった=宮城県仙台市で

  • 新型コロナの影響で3・11メモリアルネットワークの報告会もリモート開催となった=宮城県仙台市で
  • 南三陸ホテル観洋の語り部バスで当時の教訓を伝える伊藤俊さん=宮城県南三陸町で
 東日本大震災から今年で10年を迎えるが、今後の震災体験の伝承が心配されている。民間の語り部活動を支える仕組みが整っていない中、新型コロナウイルス感染拡大が追い打ちをかけた。オンラインによる「リモート語り部」で対応するなど、コロナ禍での模索が各地で続いている。(梅田歳晴)
 「人に来てもらわないことには語り部の話が始まらない」。宮城県南三陸町の町民有志でつくる「海の見える命の森実行委員会」の阿部寛行副実行委員長(59)は困り顔で言った。市街地や志津川湾などが見渡せる高台で、震災の被災と自然の大切さを伝える学習プログラムを実施しているが、その多くが昨年はキャンセルになった。「世の中はコロナ、コロナで、震災が忘れられるのではないか」
 伝承活動をする個人・団体などでつくる「3・11メモリアルネットワーク」が被災3県で活動する24団体・個人に聞いた調査では、昨年3~5月の震災学習プログラム参加者数が前年同期比で約95%激減した。武田真一共同代表は「復興とは『伝承』だと思う。みんなで総括し、未来につなぐ。知見を共有できるようになること。震災10年に向けて関心が高まると思われた節目の年に大きな影響を受けた」と話す。
 2012年から1日も休まず「語り部バス」を運行してきた南三陸町の南三陸ホテル観洋では、昨年春に初めて運行が途絶えた。客が1人もいない期間がしばらく続いた。町の語り部とホテル従業員の計約20人が語り部バスで案内しているが、第1営業次長の伊藤俊さん(45)は「語り部らの中には同じ気持ちのまま続けることに、疲れてしまっている人もいる」と明かす。
 新型コロナの流行が収まらない中、オンラインで活動に取り組む人も。宮城県石巻市で語り部活動を続ける草島真人さん(61)は、地元の団体が催したオンラインによる震災関連イベントに参加し、自らの経験を語った。「リモートは対面と同じようにはいかないが、東北の冬場は寒くて屋外では案内しにくいので、冬場の活動に生かせると思う」と可能性に期待する。
 東北大の佐藤翔輔准教授(震災伝承学)は「外部からの人が圧倒的に減った影響は大きい。だが、良い面もあった。地元の人間や学校が海外など遠くの旅先を選ばずに、身近な被災地に足を運ぶケースが増えた」と説明。「次の10年を考える上で、活動の見直しや改善を図る機会にもなっている。リモート化も進み、距離的制約があって、これまで伝えられなかった人にも伝えられる」と話した。

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