「最後の1人まで寄り添う」 かけ離れた東電の賠償実態 集団申し立てで目立つ和解案拒否

2021年1月13日 06時00分
 東京電力は、福島第一原発事故で避難を強いられた被災者への精神的損害への賠償として事故当初、毎月10万円を支払っていた。2012年3月から、政府の避難指示による帰還困難区域の避難者へは一括払いに方針が変わり、既払い分も含めて1人1450万円で賠償は終了した。
 東電は、賠償について「三つの誓い」を掲げ、①最後の1人まで賠償の貫徹に②迅速かつきめ細かな賠償の徹底③和解仲介案の尊重―を約束。「最後の1人が新しい生活を迎えることができるまで、被害者に寄り添い賠償を貫徹する」とうたう。
 しかし、実態はかけ離れている。東電は文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会が示した賠償基準「中間指針」に沿って賠償の可否や金額を決め、指針を盾に支払いを拒む例が多い。
 被災者は東電に直接ではなく、長期間かかる裁判や、国の原子力損害賠償紛争解決センターが仲介して和解案を示し、比較的短期間で終わる裁判外紛争解決手続き(ADR)でも賠償を求めることができる。

◆ADRの申し立て2万6000件超

 東電や国に損害賠償を求めた集団訴訟は約30件。中間指針を超える賠償を命じた例が多いが、確定判決はまだない。ADRの申し立ては1月4日時点で2万6000件を超え、8割は和解成立。ただ、地域住民の集団申し立てでは、東電が和解案を拒む例が目立つ。
 20年末時点の賠償支払総額は9兆6863億円。賠償には、国が原子力損害賠償・廃炉等支援機構に国債を交付し、機構が東電に無利子で貸し付けた資金が使われている。(小野沢健太)

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