<わたしの転機>「社会の役に」思い同じ 警察官を定年退職 演歌歌手でCDデビュー

2021年1月13日 07時05分

カラオケスタジオで演歌を披露する中元実さん=津市海岸町で

 こぶしを利かせ、情感たっぷりに歌い上げる。津市を拠点に活動する演歌歌手、中元実さん(72)は、元三重県警の警察官だ。事件を追う忙しい日々の中で歌う楽しさと出合い、定年退職後にCDデビューした。「今度は歌で社会の役に立ちたい」と舞台に立つ。 (熊崎未奈)
 専門学校卒業後、地元の三重県熊野市で漁師やダンプカーの運転手など仕事を転々として、二十八歳の時、母の勧めで警察官の試験を受けました。県警では防犯課(現・生活安全課)勤務が長く、若い頃は暴走族の取り締まりや薬物の密売事件の処理に忙殺されていました。しんどい時もありましたが、充実していましたね。
 歌手になったきっかけは警視に昇任し、桑名署に配属された五十七歳の時のこと。事件指導官として緊張の毎日の中、仕事終わりに官舎の前のスナックに寄るのが楽しみでした。ある時、カラオケを歌ったら、ママに「うまいやんか」と褒められ、歌への熱に火が付いたんです。休日に昼のカラオケ喫茶に通うようになり、そこの常連客が主宰する歌謡教室にも行き始めました。
 思えば、幼い頃から歌が好きでした。助産師の母と二人暮らしで、一人で留守番する夜はラジオが友達。演歌や歌謡曲を聴いては歌詞をメモして、まねして歌っていましたね。
 歌への熱は定年退職後も冷めず、マイクやアンプなど音響機材一式を購入して、地域の介護施設にボランティアで歌を披露しに行くようになりました。在職中に母を亡くし、親孝行もあまりできなかったので、親世代のために何かしたいという気持ちもありました。
 防犯にもつなげようと、振り込め詐欺の被害防止をテーマにした「騙(だま)されないでね音頭」を作詞し、歌いました。県警や県庁から防犯講座の出演依頼も来るようになり、活動を知った通信カラオケ会社の人から新曲作りも勧められました。そして二〇一五年、故郷の情景や母への思いをつづった「祈りの郷(さと)」でキングレコードからデビュー。イベント出演も増え、昨年十一月には四枚目のCD「津の街…恋詩(こいうた)」を出しました。
 歌は世界を広げてくれます。歌を通してたくさんの人と知り合い、今は何度目かの青春を味わっている気分。七十代になり、健康なうちに社会の役に立たなあかんな、とも思います。最近は施設からの依頼が減り、イベント出演に重点を置いていましたが、原点に返りたい。コロナ禍が収束したらまた施設を巡り、笑顔を届けていきたいです。

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