<つなぐ思い 震災10年>(5)コンビナート火災 教訓消さぬ コスモ石油千葉製油所で現場指揮 市原市消防局・天野正次さん

2021年1月13日 07時15分

大型放水砲車の放水を見守る天野正次さん=いずれも市原市で

 真っ赤な火柱と黒煙、大きな爆発音が今でも忘れられない。東日本大震災の際、市原市五井海岸のコスモ石油千葉製油所で発生した火災は、従業員ら六人が重軽傷を負い、鎮火まで十日かかった。「知識や経験を少しでも伝えたい」。可燃性ガスなど多くの危険物を貯蔵するコンビナートでの大規模火災の恐ろしさを現場指揮官として目の当たりにした同市消防局消防総務課長の天野正次さん(55)は、教訓を風化させぬようこの十年、視察に訪れた人や職場の後輩たちに何度も体験を語り継いできた。
 二〇一一年三月十一日、市原市では震度5弱を観測。同製油所では液化石油ガス(LPG)を保管する球形タンクの支柱筋交いの一部が破断。午後三時十五分ごろ、余震でタンクが倒れ、配管から漏れたガスに引火した。午後五時すぎ、オレンジ色の閃光(せんこう)とともに真っ赤な火柱と真っ黒な煙が立ち上った。地響きのような爆発音は約八キロ離れた県庁(千葉市中央区)まで響いた。
 市中央消防署でその光景を目撃した天野さんは「非常に大きな爆発だったので、殉職者を覚悟した」と振り返る。
 「当初は市消防局は現場に近づけず、状況を把握するのも難しかった」と天野さん。二次災害の危険から、ガスが燃え尽きるのを待つしかなかった。

火柱を上げるコスモ石油千葉製油所(県警提供)

 当時、現場で指揮を執った職員で現役なのは二人だけで、四月以降は天野さん一人となる。「後にも先にも、コスモ石油千葉製油所の火災を上回る規模の火災は経験したことがない」。当時の教訓を関係者や後輩にどう伝えるかが課題だ。
 市消防局では年に数回、視察に来た外部の消防関係者らに当時の体験を紹介し、教訓を伝えている。また、震災翌年からはコンビナート企業と連携し、火災や危険物の漏えい事故など実際に起きた事例についての研修会を開催。近隣事業所を招き、これまで計十六回開催し、事業所自身が事故原因などを発表する形式で危機意識を共有している。
 天野さんは「コンビナートには似た設備を持つ事業所も多い。各事業所で情報共有することで事故の防止につなげたい」との狙いを話し、「事故の件数に大きな変化はないが、規模の大きなものは減った印象がある」と効果を感じている。
 国もコンビナート火災への対応を進める。総務省消防庁が一四年度に特殊部隊「ドラゴンハイパー・コマンドユニット」を市消防局に配備した。現場に近づけなくても放水できるように特殊車両を使用する部隊で、現在、全国十二カ所に配備されている。その先駆けとなったのが市原市消防局だった。現在、同市消防局では二十一人の隊員が特殊車両の訓練を重ねている。
 最大の武器が「大型放水砲車」。一般的な消防車の約四倍に当たる最大毎分約八千リットルを放水できる。一キロ先から取水でき、昨年十二月に行われた訓練では「放水開始」の合図とともに、約百メートル先まで届く水の放物線が描かれた。
 市消防局は今年、震災から十年を迎えることに合わせ、コスモ石油千葉製油所での火災への対応をテーマに取り上げた関係者向けの研修会を開き、天野さんが講師を務める予定。天野さんは「今後もいろいろな災害が発生するのは避けられない。これまでに培った情報を活用し、どんな現場でも対応できるように尽力していきたい」と力を込めた。 (山口登史)

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