<新型コロナ>病床は世界最多、感染は欧米より少ないのに…なぜ医療逼迫?

2021年1月14日 06時00分
 人口当たりの病床数が世界でもトップクラスで、欧米に比べ新型コロナウイルス感染者数が少ないにもかかわらず、国内の医療が逼迫している。原因として、全国の主な病院のうち新型コロナ患者を受け入れ可能な病院が25%にとどまることが指摘されている。(井上靖史、藤川大樹、原田遼)

◆1000人当たりの病床数、米英の4、5倍

 経済協力開発機構(OECD)の2019年の調査対象国のうち、人口1000人当たり病床数は日本が13・0床で最多。韓国が12・4床、ドイツは8・0床と続く。米国は2・9床、英国は2・5床だ。
 厚生労働省のまとめでは、20床以上の病床がある病院は8247施設。全国の病院の稼働状況を一元管理する厚労省の情報システムに登録している7403施設(昨年11月末現在)のうち、コロナ患者を受け入れ可能としたのは1872施設で全体の25%。一般病床や感染症病床は計約89万床あるが、コロナ対応は2万7600床と3%にとどまる。

◆コロナ患者受け入れ、民間病院は2割

 けがや病気の初期治療に当たる全国4255カ所の急性期病院でみると、公立病院は7割、公的病院は8割がコロナ患者を受け入れているが、民間病院は中小規模が多く、受け入れは2割ほどだ。
 民間で受け入れが進まない理由について、経営病院でクラスターを経験した平成医療福祉グループ代表の武久洋三医師は「コロナの患者さんを診るのは通常の何倍も手が掛かる上、他の手術や診療もできなくなり赤字になる。院内感染のリスクも抱える」と説明する。

◆受け入れた病院は「数十億円の赤字」

 しかし、コロナ患者を受け入れ、経営が厳しくなるのは公的病院も同じ。日本感染症学会の舘田一博理事長は勤務先の東邦大学の運営病院(特定機能病院)がコロナ患者を受け入れ「数十億円の赤字になった」という。舘田さんは「特定の病院に負荷が掛からないよう、どこがどのぐらい受け入れているか見える化することも一案だ」と話す。
 日本医師会の釜萢敏常任理事は「行政がしっかり方針を示す必要がある。今の仕組みだと(コロナ対応を)強制できないけど、中長期的にはそうした議論も必要になる」と主張する。
 日本医療法人協会の太田圭洋副会長は重症者対応病床を増やすことが重要だと指摘しつつ「重症対応するには集中治療室(ICU)などが必要で、病床を急激には増やせない」とする。さらに「民間も増やす努力はするが、流行を抑制して感染者を減らさないと、その場しのぎにしかならない」と強調する。

◆制度の問題を問われ、首相「国によって考え方違う」

 日本が世界有数の病床数を確保しながら、新型コロナ感染拡大に対応できていない現状について、菅義偉首相は13日の記者会見で、日本の制度や体制に問題があると考えるかを問われ「感染拡大が続く中、まずは必要な医療の提供を受けられるよう病床を確保していくことが極めて重要だ」と話すにとどめた。
 米ブルームバーグ通信の記者が「米国のように1日で万単位の感染者が出る国と比べるとかなり水準は違うにもかかわらず、国内では医療崩壊の可能性が指摘されている」として、首相の考えを聞いた。
 首相は「国によって医療提供体制の状況や医療に対しての考え方は違う。比べることはなかなか難しい」と話した。

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