<ねぇゴローちゃん!腹話術師の旅日記>1.17 阪神大震災忘れない 心の復興 力になりたい

2021年1月14日 07時12分

神戸市須磨区にあった仮設住宅の前で、腹話術を披露した激励公演(しろたにさん提供)

 和太鼓を打ち鳴らすと、仮設住宅前に設けた即席の上演会場に一人、二人と集まってきました。阪神大震災で被災した神戸市に一九九七年夏、私が代表をしていた京浜協同劇団(川崎市幸区)の仲間たちと訪れました。
 1・17のあの日から二年半がたった当時も、多くの人たちが仮設住宅で暮らしていました。現地は復興の途上で、ボランティア公演を受け入れるゆとりのある場所は少なく、須磨区など三カ所で上演することができたのです。
 まず披露したのは、「権兵衛太鼓」という福井県の伝統芸能。権兵衛が油を買いに行く山道で天狗(てんぐ)と般若に出くわし、太鼓の早打ちなどを教わる物語。せりふがなく、しぐさで伝えるコミカルな内容が喜ばれました。
 私の腹話術が始まるころには、観客は八十人にも。大きくなったらアナウンサーになりたいと語るゴローちゃんと一緒に、発音練習をするネタを披露しました。
 「ゴローちゃん、始めるよ。カキクケコ」「カキフライ」「じゃあ次、ナニヌネノ」「ナニヌカス」…。子どもたちが声を上げて大笑い。それにつられて、大人たちも大笑いしてくれました。
 上演後、九十歳くらいのおばあちゃんが言いました。「楽しかった。長生きしていてよかったよ」。褒めすぎだとしても、私たちの疲れを吹き飛ばしてくれました。
 被災地に出向くたび、皆さんに寄り添えただろうかと自問しています。私は芸で「心の復興」の力になりたい。コロナ禍もそうですが、うつむきかげんになる時こそ、文化の出番ではないかと思うのです。 (しろたにまもる=寄稿)

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