<つなぐ思い 震災10年>(6)歌の力 被災地へ 12年から復興応援コンサート きみつ少年少女合唱団

2021年1月14日 07時15分

きみつ少年少女合唱団の練習風景=君津市文化ホールで 

 山と緑に囲まれた君津市から、いつも被災地に心を寄せてきた。きみつ少年少女合唱団が「とどけ歌の力」をテーマに被災地復興応援コンサートを始めてから八年の時が過ぎた。
 合言葉は「練習はうそをつかない」。現在は小学生から高校生までの約五十人が練習に励む。入団条件は「練習に通えること。自分のことは自分でできること。一番大事なのは歌が大好きなこと」。そう話すのは合唱団の常任指揮者で地元の小学校教員を務める石川真奈美さん(59)だ。
 二〇一一年三月十一日の東日本大震災発生時、石川さんは君津市役所で激しい揺れに襲われた。騒然とする庁舎内でテレビを見ると、仙台空港に津波が押し寄せる光景が目に入った。「知り合いが営むカーネーションのビニールハウスが津波で流されていくのが見えた」とあっけにとられるしかなかった。
 合唱団は米中枢同時テロが起きた〇一年から、恵まれない子どもたちや自然災害に遭った国々にチャリティーコンサートの収益を寄付していた。「東北の被災地を助けたい」。メンバーがそう考えるのは自然だった。石川さんが宮城県白石市出身だったこともあり、一二年八月、同県石巻市と南三陸町で被災地復興応援コンサートが企画された。以来、同県各地でコンサートを重ねている。
 曲目は童謡や唱歌のほか、千葉県内にある東京ディズニーランド(TDL)にちなんでディズニーソングの合唱も。ピアノの伴奏に乗った清らかな歌声が会場をひとつにする。
 合唱団団長の保坂心音(ここね)さん(17)は「現地の皆さんから『良かったよ』『また来てね』と言われ、こっちがうれしくなりました」。副団長の白鳥愛生(あい)さん(16)も「言葉を交わさなくても人は歌で通じ合える」。ともに歌の力を信じ、目を輝かせる。復興コンサートをきっかけに現地の合唱団との交流も進む。
 一九年九月の台風15号で君津市は広範囲に家屋が損壊し、停電に見舞われた。ブルーシートや食糧といった支援物資が全国から届き、その中に復興応援コンサートで訪れた仙台市や東松島市、山元町など宮城県の自治体が名を連ねた。被災地からの恩返しだった。
 残念なのは、新型コロナウイルスの影響で昨年八月に東松島市と仙台市で予定していた復興応援コンサートが中止になったこと。練習も七月になってようやく再開できたほどで、十二月二十日に君津市民文化ホールで開いたクリスマスファミリーコンサートが、この年の最初で最後の晴れ舞台となった。
 今年は、八月に復興応援コンサートが控える。先行きは不透明だが、今は新型コロナ収束を信じて練習に打ち込むしかない。
 「子どもたちのおかげでせっかく君津に芽生えた音楽文化。被災地を忘れない、(世間に)忘れさせないためにもコンサートは続けたい」。石川さんは穏やかに願う。 (山田雄一郎)
  =終わり
<きみつ少年少女合唱団> 子どもたちの健全な育成を目指し、君津市が2000年4月に設立。数々のコンクールで入賞を果たし、18年と19年の東京国際合唱コンクールで金賞に輝く。被災地での活動が評価され昨年10月、第9回ウィーン・フィル&サントリー音楽復興祈念賞に選ばれた。

2019年8月、仙台市で行われた被災地復興応援コンサート(君津市提供)


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