再び緊急事態宣言 エンタメの灯、守りたいが

2021年1月14日 07時17分

 映画「銀魂 THE FINAL」の舞台あいさつを行う声優ら=9日、東京都新宿区で

 新型コロナウイルス感染急拡大に伴う政府の二度目の緊急事態宣言は、休業を余儀なくされた昨春よりは緩和されたとはいえ、映画や演劇、文化芸術の各分野にダメージを与えている。「午後八時まで」「感染不安で客が来ない」と逆風が吹く中、興行関係者からは営業を続けるとともにエンターテインメントの灯を守るという決意や志がにじむ。「不要不急」のやり玉になりがちな文化娯楽、再度の苦境をはね返せるのか−。 (藤原哲也、山岸利行、藤浪繁雄)

◆映画界・「昨春よりマシ」でも不安

 十二日に発表された映画の興行収入ランキングで“異変”があった。国内の興収記録を塗り替えたアニメ映画「劇場版『鬼滅(きめつ)の刃(やいば)』無限列車編」が昨秋から守ってきた首位の座を明け渡した。制したのはアニメ作品「銀魂(ぎんたま) THE FINAL」。しかし、動員数は公開日の八日が約十一万三千人、十一日は六万六千人余と減少した。昨年十二月二十六日の「鬼滅−」が三十五万人余だったことを見ると、外出抑制ムードの高まりの影響を受けた可能性もある。
 大手シネコンは軒並み、午後八時で上映終了し、当日券のみで対応している。営業できなくなった昨春の宣言時と比べると、「全然マシ」と話す業界関係者は多いが、今後の感染状況への不安は尽きない。
 東京都内の“独立系”の名画座も夜の上映を控える動きが主流だ。飯田橋ギンレイホール(新宿区)では、九日から午後八時以降の上映を休止。それ以前は最終上映は午後七時以降にスタートしていただけに、久保田芳未(よしみ)支配人は「その時間にしか来られない人もいるので非常に残念。二月からは上映時間全体を見直すことも考える」と肩を落とす。

飯田橋ギンレイホールの入り口に掲げられた上映時間変更の案内=東京都新宿区で

 神保町シアター(千代田区)では、菅義偉首相が緊急事態を宣言した七日から、午後七時台の上映を中止。定員九十九席のところ、四十八席に減らして営業しているが、宣言発令の数日前から客入りが激減してきたという。
 シネマブルースタジオ(足立区)も午後八時に終了するよう上映開始を三十分前倒しして興行を続けているが、担当者は「この状況で『来てください』とも言えず、上映回によっては入場者が数えるくらいの回もある」と明かす。
 一方で、池袋の新文芸坐(豊島区)は万全の感染対策をした上で、座席数も100%(二百六十二席)で通常営業を続ける。レイトショーやオールナイト上映の予定も変更しないという。スタッフは「映画の灯は消したくない思いから独自の判断になった」と説明。ただし、名画を好む年配客が減っているため「若年層や映画マニアに向けた番組なども今後は増やしていきたい」と話している。

◆演劇界・興行の在り方、影響か

開演時間変更を知らせる紙が張られた東京宝塚劇場入り口=東京・有楽町で

 今回の緊急事態宣言では、飲食店などには営業時間を午後八時までと要請があった。興行関係には同八時までの時短営業などの「働きかけ」があった。この状況を受け、演劇界からは「興行の在り方が変わるのでは」との声も出始めている。
 東京・有楽町の東京宝塚劇場での宙組公演「アナスタシア」は、八日が初日。昨年末からの感染者急増で公演の行方が懸念されたが、予定通り上演されている。ただ、宣言を受けて一日二回公演のうち、終演が午後八時を過ぎる二回目の公演について、開演時間を繰り上げる措置をとった。二月二十一日が千秋楽だが、「宣言期間」後の同八日以降についてはあらためて発表する。
 宝塚歌劇は、密を避けるため演出や稽古などに工夫を凝らしてきたが、昨年八月、出演者、スタッフに感染者が出て公演が中止になった。
 現在の感染状況はその時より緊迫している。宙組トップスターの真風涼帆(まかぜすずほ)は「このような状況の中、劇場に足をお運びくださるお客さまには、三時間、夢のような時間をお過ごしいただけるよう、出演者一同、熱く熱く舞台を盛り上げていきます」とコメントを出した。
 東京・銀座の歌舞伎座では「寿初春大歌舞伎」(二十七日まで)を上演中だが、松竹は第三部の開演を二十五分繰り上げ、午後六時二十分とした。午後八時までの終演とする措置だ。
 「二月大歌舞伎」についても第一部の開演を三十分早めて午前十時半と発表、全体的に前倒しにして第三部を午後八時までに終わらせる。
 歌舞伎座は昨年八月、五カ月ぶりに公演を再開、「消毒、換気を徹底し、出演者は感染することなく、(昨年の)五カ月を乗り切った」と関係者は振り返る。一部一演目の四部制を続けてきて、一月からは三部制に変更したばかり。昼夜二部制が基本だったこれまでの興行復活に一歩近づいたが、二度目の宣言。「歌舞伎を見に行きたいけど、コロナが怖くて行けない」というファンが、特に年配者に多いという。
 完全に上演中止になった昨年とは異なるが、「午後八時までの風潮になると、夜の部ができなくなる」と興行の在り方に不安を募らせる舞台関係者もいる。
 松竹、宝塚歌劇、東宝など二百以上の団体が参加する緊急事態舞台芸術ネットワークは今回の緊急事態宣言を受け、「舞台芸術も含めて『文化』は失ってはいけない人間の『心』そのもの。舞台芸術の力が多くのお客さまの日々に潤いをもたらすと信じ、安心安全に『劇場の灯』を灯(とも)し続けることに一意専心してまいります」とアピールしている。
◆美術館など
 美術館や博物館では埼玉、千葉、神奈川の県立施設が休館している。

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