リスナーに届けた希望 台風15号

2019年9月29日 02時00分

特設スタジオの外観=君津市で

◆山の上特設スタジオから放送 かずさエフエム

 台風15号の暴風で、県内では広範囲に停電が続き、一部地域で通信機能が大きく乱れた。被災した地域のコミュニティー放送局は、特設スタジオに拠点を移して放送し、被災者にとって必要な情報を発信し続けた。 (山田雄一郎、丸山将吾)
 木更津、君津、富津、袖ケ浦の四市が放送エリアのコミュニティー放送局「かずさエフエム」(木更津市富士見)は、送信用の設備が破損し、一時、本局から南に約二十キロ離れた君津市山奥にスタジオを移して、防災情報を発信し続けた。
 同局は日頃、JR木更津駅西口の複合ビルの二階にある本局から、地元のイベントや行政情報、音楽番組などを放送している。九日午前二時ごろ、停電が発生。非常用発電機を使い、十一日午前まではどうにか放送を続けたが、送信所に電波を送る回線が使えなくなったため、標高三五〇メートルの山の上にあるゴルフ場の売店に特設スタジオを開設し生放送することにした。
 パーソナリティーやディレクター、スタッフら社員五人がローテーションを組み、交互にスタジオに詰めたが、現地は道幅が狭く、倒木も散乱しており、車でたどり着くのもひと苦労だった。また、次から次へと送られてくるファクスに息をつく間もない忙しさだった。テーブルにマイクを置いただけの急ごしらえのスタジオから、被災したリスナーらに防災情報を届けた。
 それでも放送を続けられたのは「みんなラジオが好きだから。使命感もあった」と石村比呂美社長。特設スタジオからの放送は十九日正午まで続けられた。
 この間、全国のコミュニティー放送局からは「何か足りない物はないか」と支援を申し出る声が相次いだ。神奈川県小田原市の「FMおだわら」から贈られた雨よけ用のブルーシート千枚は、木更津、君津両市に五百枚ずつ届けた。
 石村社長は「災害への備えはしてきたつもりだが、実際に遭遇すると気づかないことばかり。リスナーとのつながりを確認できたのは、本当にうれしかった。これからも市民のライフラインをタイムリーに伝えたい」と振り返る。

台風15号の被害を逃れるため、山の上から放送した特設スタジオ=君津市で(かずさエフエム提供)

◆市役所に緊急ブース 「ありがとう」に救われた 市原FM放送

 市原市と長柄町などがエリアの「市原FM放送」(市原市国分寺台)は、十四~二十日、市原市役所第二庁舎の一角に緊急放送ブースを設け、防災情報を届けた。
 階段に沿って全長約百四十メートルのケーブルをはわせ、屋上の送信所と庁舎三階の仮設の放送スペースを結んだ。十四日に試験放送を始め、十六日に本放送に移行した。御園生賢司社長や社員が、被災した市原市内などを実際に歩き、倒木や通行止めなど見聞きした情報を、そのまま電波に乗せた。
 ただ、回線がダウンした九~十四日、全く情報を発信することができなかった。御園生社長は「災害時に市民を助ける情報を発信し続けるのが責務。こんな時に発信できないのなら、もう辞めた方が…」とも考えたという。
 それでも、リスナーから届く「ありがとう」「助かった」という声に救われた。御園生社長は「一人でも多くの人の役に立てたのなら、これ以上のことはない」と話した。

市役所3階の廊下に設けられた緊急放送ブース=市原市役所で

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