緊急宣言拡大 切り札になっているか

2021年1月14日 07時20分
 政府は緊急事態宣言の対象地域拡大を決めた。医療崩壊を防ぐためにも感染拡大を抑える対策が最優先だが、宣言が危機感を共有し、対策の効果を上げる「切り札」となっているのだろうか。
 「日中なら外出できる」。緊急事態宣言に伴う政府の要請が、こうした間違ったメッセージとして国民に伝わってはいないか。
 東京、神奈川、千葉、埼玉の一都三県を対象に緊急事態を宣言した際、政府は外出自粛やテレワークの促進と併せ、飲食店などの営業時間の短縮、イベントの開催制限などを要請した。
 昨年四月の前回宣言では「人との接触八割減」など個々人が理解しやすい数値目標を示したが、今回は「外出自粛」と言うのみ。その一方で、店舗は日中開いているし、イベントも開催できる。
 小出しで中途半端な対応にしか見えない。共同通信社の世論調査でも、こうした対策による感染拡大の防止は「期待できない」が、72・6%に達している。
 中途半端な対応はこれだけにとどまらない。宣言の対象地域拡大に併せて、飲食店などに食材や資材などを提供する事業者への一時金支給を決めた。コロナ禍による苦境は関連事業者も同じであり支援は当然だが、対象が限定され支給額も十分なのか疑問が残る。
 感染力が強いとされる変異種の流行を防ぐには水際対策が重要だが、十一カ国・地域とのビジネス目的の往来停止判断が遅れた。
 東京都内の繁華街では、宣言後の三連休の人出が前回の宣言時を上回った。政府の煮え切らない対応が、国民の不信感や批判を招いているのではないか。
 東京では、感染が判明しても入院や宿泊療養先が見つからず待機している人が、直近の一週間で約六千人と年末年始の約三千人から倍増した。医療機関の受け入れ能力を超える事態に陥っている。
 政府はきのう、緊急事態宣言の対象を愛知、岐阜、栃木、大阪、京都、兵庫、福岡の七府県にも拡大した。流行状況を考えると後手の印象は拭えない。
 このままでは緊急事態宣言の対象地域を拡大しても感染の封じ込めは難しい。感染拡大を抑え込むには、実効性ある対策を短期間に集中して行うことが必要だ。感染しても無症状や軽症が多い若者と危機感をどう共有するかも課題となる。
 国民の命と暮らしを守り、社会や経済を早期に元に戻すために政府は何をすべきか。本腰を入れて真剣に検討すべき局面だ。

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