「民主主義に直接攻撃」糾弾 再出馬資格はく奪の狙いも<トランプ氏弾劾>

2021年1月15日 06時00分
 トランプ米大統領が史上初の2度目の弾劾訴追を受けたのは、大統領選で不正が行われたと虚偽の主張を続け、選挙結果を覆そうと支持者を扇動したことが「民主主義への直接攻撃」(米政治学者)とみなされたからだ。さらに、任期切れ直前に民主党が決議に踏み切った背景には、もう一つの狙いもある。(ワシントン・金杉貴雄)

◆銃声と暴徒「この男は危険だ、罷免の必要がある」

 「私はあそこで銃声と暴徒がドアをたたく音を聞いた」。13日の下院本会議場。ダイアナ・デゲット議員(民主党)は討論で、1週間前に自らが身を隠した場所を指し訴えた。「だが『何も間違っていない』と大統領は言った。この男は危険だ。罷免の必要がある」

13日、トランプ米大統領の弾劾訴追を可決する下院本会議(下院提供)=AP

 民主党議員たちは議会が襲われた生々しい記憶のもと、「大統領はうそを繰り返し、私たちの民主主義を攻撃するために支持者を扇動し、5人の死をもたらした」などとトランプ氏を次々と糾弾。共和党議員たちも、多くがその責任を正面から否定できなかった。

◆「選挙を阻止、非民主的に権力握ろうとした」

 ウィラメット大のノーマン・ウィリアムズ教授(憲法学)は「トランプ氏はウクライナ疑惑で外国を通じ選挙に干渉しようとしたが、今回はより直接的に民主的選挙を阻止し非民主的に権力を握ろうとした」と批判。「過去の米国の弾劾事件の中でも最も深刻なものだ」と断じた。

 トランプ氏はこれまで、自らを支持する暴力的極右組織への批判を避け、むしろ利用しようとしていたようにみえる。昨年の大統領選討論会では、極右組織「プラウド・ボーイズ」の名を挙げ「下がって待機せよ」と暴力行為の準備を命じたと受け止められるような発言をした。同組織はその言葉通り、今回の議会襲撃に加わっていた。

◆「死に物狂いで戦う」集まった支持者たきつけ

 直前の集会でトランプ氏は、バイデン次期大統領の勝利を議会が公式に確認することに反対し、「全員が議会に行進する」「死に物狂いで戦わなければ国を失う」などと集まった数千人の支持者をたきつけた。
 ワシントン・ポスト紙によると、襲撃が始まるとトランプ氏はテレビで状況を見ていたという。襲撃開始から3時間後にビデオメッセージを発するまで沈黙を保って放置したまま、展開を見守っていた。

◆弾劾訴追の狙いは公職剥奪し「米政界追放」

 弾劾訴追されたトランプ氏だが、20日には任期満了で退任する。日程上、上院の弾劾裁判は20日以降となる見通しで、罷免は事実上不可能だ。こうした状況でも弾劾訴追に踏み切った民主党の狙いは、公職資格の剥奪はくだつによる「米政界追放」だ。
 弾劾裁判で上院の3分の2の賛成で有罪とした後、上院は再度過半数の賛成で公職資格を剥奪はくだつできる。この場合は2024年の大統領選再出馬も阻止できる。
 かぎを握るのは共和党だ。有罪には共和党議員50人のうち17人の賛成が必要で、ハードルは高い。ただ、上院トップのマコネル院内総務は、賛成の可能性に含みも持たせている。
 共和党は近年「トランプ党」の道を突き進むが、大統領退任後なら距離を置く議員が増える可能性もある。ジョージタウン大のスーザン・ブロック教授(憲法学)は「今後の展開は誰も確信できないが、2度の弾劾訴追でトランプ氏が過去最悪の大統領の1人とみなされることは確かだ」と指摘している。

PR情報

米大統領選2020の新着

記事一覧