防衛費最大に 敵基地攻撃を先取りか

2021年1月15日 06時58分
 コロナ禍でも防衛費の膨張が止まらない。二〇二一年度予算案は七年連続で過去最大を更新した。敵基地攻撃能力の保有につながる項目が多く盛り込まれており、引き続き妥当性の検証が必要だ。
 米軍再編関係経費などを含む防衛省の二一年度当初予算は前年度比0・5%増の五兆三千四百二十二億円となった。新たな領域への対応や相手ミサイルの射程外からの攻撃を可能とする「スタンド・オフ防衛能力」の強化などを要求の根拠としている。
 日本の防衛費は冷戦終結後、減少傾向が続いていたが、安倍晋三前首相が政権復帰後に編成した一三年度に増額に転じた。当初予算ベースでは二一年度まで九年連続で増え続け、一五年度以降は過去最大を更新し続けることになる。
 見過ごせないのは将来「敵基地攻撃能力」への転用が可能とみられる防衛装備品の調達経費が多く盛り込まれていることだ。
 相手のミサイル発射基地など敵基地への攻撃について、歴代内閣は憲法が認める自衛の範囲内としつつ、実際に攻撃できる装備を平素から保有することは「憲法の趣旨ではない」としてきた。
 「敵基地攻撃能力の保有」検討は、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」(地上イージス)の断念に伴い、安倍氏や自民党が求めていた。菅内閣が閣議決定した新しい方針は敵基地攻撃能力には直接言及せず、抑止力の在り方を引き続き政府で検討する一方、スタンド・オフ・ミサイルを整備する方針を打ち出している。
 二一年度予算案には陸上自衛隊の12式地対艦誘導弾(SSM)の長射程化など長射程ミサイルの整備費などが盛り込まれた。艦艇や戦闘機への搭載も目指すとして三百三十五億円を計上している。
 レーダー網をかいくぐって飛行可能な最新鋭ステルス戦闘機F35の取得費、ヘリコプター搭載型護衛艦「いずも」を事実上、空母化する改修費用も盛り込んだ。
 敵基地攻撃への利用は否定するが、性能上は日本領域内から他国領域への攻撃が可能で、専守防衛を逸脱する恐れがある。
 結論すら出ていない「敵基地攻撃能力の保有」を先取りするような形での調達は見過ごせない。
 首相交代は増え続ける防衛費を見直す好機だが、前政権で続いた増額要求を当たり前のように続けてはいまいか。財政状況が深刻化する中で、憲法をないがしろにするような防衛力の整備が現実的な選択肢であろうはずがない。

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