<評>歌舞伎座「寿初春大歌舞伎」など 貫禄見せる白鸚

2021年1月15日 08時59分

「菅原伝授手習鑑 車引」の(左から)市川染五郎、松本白鸚、松本幸四郎 (c)松竹

 コロナ禍で予断を許さぬ厳しい状況が続いているが、歌舞伎の奮闘は続いている。
 歌舞伎座は三部制の公演。第一部「壽浅草柱建(ことほぎてはながたつどうはしらだて)」は、新春恒例の浅草歌舞伎の中止を受けて、尾上松也、中村歌昇、中村隼人らの花形が顔を揃(そろ)える好企画。歌昇の工藤が堂々として落ち着いた好演で、次いで坂東巳之助の朝比奈、坂東新悟の舞鶴の明朗闊達(かったつ)が目につく。
 第二部は「坂田藤十郎を偲(しの)んで」と銘打った「夕霧名残(なごり)の正月」から。夕霧の四十九日、伊左衛門がその死を悼むところに夕霧の幻が現れる。中村鴈治郎の伊左衛門、中村扇雀の夕霧で、小品ながら昨年十一月に逝去した藤十郎の面影を偲ぶのにふさわしい舞台。
 「仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら) 祇園一力茶屋の場」は前半をカットして九太夫と伴内のやりとりから。中村吉右衛門の由良之助は酔態の柔らかさと艶が増して円熟の味。中村雀右衛門のおかるも色気、情愛、悲哀が十分で、もはや当たり役といっていいだろう。
 第三部の高麗屋(こうらいや)親子孫三代による「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ) 車引(くるまびき)」は、松本白鸚(はくおう)の松王丸がさすがに立派なマスク、朗々たる口跡で貫禄を見せる。二十七日(十九日は休演)まで。
 国立劇場は復活狂言「四天王御江戸鏑(してんのうおえどのかぶらや)」の再演。中村萬太郎(三〜十五日)、尾上右近(十六〜二十七日)の三番叟(さんばそう)でめでたく幕が開く。幕間(まくあい)を含めて三時間の短縮版だが、軽快なテンポで楽しめる舞台になった。特に源頼光館の場は尾上菊五郎の鳶頭(とびがしら)綱五郎に貫目と飄逸(ひょういつ)さがあって見事な男ぶり。中村時蔵の茨木婆(いばらきばば)、尾上菊之助の女郎花咲(はなざき)、右近の弁の内侍とイキが合っておもしろい。二十七日まで。(矢内賢二=歌舞伎研究家)

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