コロナで苦しむ生産者救おう 消費者が“密”に支援

2021年1月15日 07時37分

リンゴの収穫作業を手伝う大学生の2人 =長野県安曇野市で(福嶋子真さん提供)

 新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛の影響で、食材の出荷先が減り、農家や漁師は苦しい状況が続く。一方で、一般の人が農家を訪れて働いたり、オンライン上で野菜や魚を直接買ったりと、さまざまな支援が広がっている。これまで遠かった生産者と消費者の関係も変わりつつある。 (熊崎未奈)
 昨年十一月中旬の三日間、長野県安曇野市の農業、福嶋子真(しま)さん(34)のもとに、東京と京都から二人の大学生が訪れた。最盛期を迎えたリンゴの収穫を住み込みで手伝うためだ。
 福嶋さんは三ヘクタールの畑でリンゴやモモ、ナシ、トウモロコシ、サツマイモなどを栽培しており、リンゴだけでも年間の収穫量は十トンになる。例年は地元の信州大の援農サークルの学生たちが収穫を手伝ってくれていたが、今年はコロナ禍でサークル活動が中止に。福嶋さんは夫と義母の三人で作業に追われていた。
 応援に名乗り出たのは、飲食店の経営を志す立命館大三年の新崎真緒さん(21)と、漁師を目指している東京海洋大二年の田村志帆さん(20)。福嶋さんが昨年九月に出演した、全国の生産者らによるオンライン座談会で現状を聞き、「大学の授業はほとんどオンライン。この機会に農業の現場を知りたい」と思い立ったという。あくまでも手伝いのため賃金はなく、交通費は自己負担だ。
 リンゴの収穫は神経を使う。少しでも傷がつけば規格外になり、流通に乗せられない。二人は手作業で丁寧にもぎ取りながら、スーパーでは一個百円程度の安さで売られている現実に疑問も持ち始めたという。新崎さんは「農家の苦労を間近で見て、果物の本当の価値を知ることができた」と振り返る。
 毎日五〜六時間の作業の合間に福嶋さんの一歳半の子どもの面倒をみるなど、仕事と私生活が一体となった農家の働き方も体験した二人。家族同然の交流を通し、田村さんは「ご縁を一度きりのものにしたくない。また遊びに行きたい」と話す。福嶋さんも二人と一緒にリンゴを使った和食料理を試作したり、カフェ経営の構想を相談したりして「視野が広がった」と喜ぶ。
 食材の流通もコロナ禍で変化しつつある。市場やJAを通さず、スマートフォンなどを使って、野菜や魚を生産者から直接購入できる「産直アプリ」の人気が高まっている。
 二〇一六年九月に登場したアプリ「ポケットマルシェ」は、現在の利用者数が二十六万人と、コロナ禍が深刻化する前の昨年二月末と比べて五倍に急増した。運営会社によると、巣ごもり需要の中で品質の高い食材の購入手段として求められたほか、コロナ禍で販路を失った生産者を支える「応援消費」が増えた。出品する生産者も三千九百人と約二倍になり、「#新型コロナで困っています」というタグの付いた出品商品は約三千八百件に上る。
 利用者の九割が生産者とメッセージをやりとりしているのも特徴だ。食材の売買だけでなく、生産者を気遣う言葉を送ったり、逆に生産者が「外出自粛で苦労している消費者を応援したい」と品薄になったマスクなどの提供を申し出たりするなど、互いに助け合う関係も見られるようになったという。運営会社の担当者は「単なる売り手と買い手を超えるつながりが多くなった」と話す。

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