「強要なら行政が院内感染に責任を」コロナ患者受け入れ「勧告」に民間病院は困惑 感染症法改正

2021年1月16日 05時55分
 新型コロナウイルス患者の病床が不足している。政府は感染症法を改正し、都道府県知事らが、病院に対しコロナ患者の入院を受け入れるよう「勧告」できるようにする方針だ。しかし、体制の整わない病院では院内感染の恐れもある。民間からは「受け入れの強要なら、行政が感染管理に責任を持ってほしい」という声が上がる。(坂田奈央、志村彰太、井上靖史、小坂井文彦)

◆応じなければ病院名公表

 厚生労働省の感染症部会は15日、感染症法改正案を議論した。現在、知事らは病院に対し、コロナ患者の病床を増やすように「要請」しかできない。法改正で「勧告」に権限を強化することに参加者から異論は出なかった。
 会合後、厚労省の担当者は「都道府県の権限を明確にし、法律上の根拠に基づいて病床確保をできるようにする」と説明した。特に重症化リスクのある患者を優先的に入院させるためには、知事が地域の感染と病床の状況を把握し、調整する必要があるという。
 現在、民間のけがや病気の初期治療にあたる急性期病院のうち約2割しか、コロナ患者の入院を受け入れていない。法改正の狙いは、受け入れる病院を増やすことにある。応じない場合は、病院名を公表できるようにする。
 既に神奈川県は動いている。14日、コロナ患者を受け入れていない県内の245の病院、医師が出入りする特別養護老人ホーム(特養)、介護老人保健施設(老健)計600カ所に、入院・通院患者や入所者が感染したら、自ら治療をするように求めた。
 病院は中等症まで、特養と老健は軽症まで。症状が悪化したら対応可能な医療機関に患者を搬送する。ノウハウに乏しい施設から、施設内感染への不安の声が出ることが予想されるが、「患者を個室で治療して動線を分けるなどすれば防げる」と県は説明する。
 阿南英明・同県医療危機対策統括官は「本当に必要な人に必要な医療を提供したい。全ての医療機関で、できることをしてほしい」と求める。

◆準備整わないうちに

 深刻な病床不足は、これまでの国の対応のせいでもある。田村憲久厚労相は15日の記者会見で「(病床の確保を)地域医療計画に盛り込み、準備、訓練も含めてしておくべきだった」と反省を語った。準備不足のまま、コロナ患者受け入れを「勧告」し、うまくいくのか。
 日本医療法人協会の太田圭洋副会長は「地域の病院の役割分担を理解してコロナ患者の受け入れを考えないと、救急の制限などコロナ以上のダメージになりかねない」と指摘する。
 自身が経営する病院でコロナ患者を受け入れて院内感染を起こし、結果的に他の患者に影響が出た。「増床してもすぐに上限がくる。感染を抑えないと解決しない」
 ある医療法人の幹部は「多額の税金が投入されている公立や公的な病院がもっと積極的に受け入れた上で民間に広げるべきでは」と反発する。「民間に強制的に受け入れさせるなら、行政が責任を持って感染管理をするべきだ」と訴えた。

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