「政治家は俺に任せておけ」 規制強化を恐れた鶏卵大手の代表は農水省トップに近づいた

2021年1月16日 05時50分
2018年11月12日、農林水産省の大臣室で吉川貴盛元農相(中)に要望書を手渡すアキタフーズの秋田善祺元代表(左)。右端は西川公也元農相=西川公也元農相のブログより

2018年11月12日、農林水産省の大臣室で吉川貴盛元農相(中)に要望書を手渡すアキタフーズの秋田善祺元代表(左)。右端は西川公也元農相=西川公也元農相のブログより

  • 2018年11月12日、農林水産省の大臣室で吉川貴盛元農相(中)に要望書を手渡すアキタフーズの秋田善祺元代表(左)。右端は西川公也元農相=西川公也元農相のブログより
政官業の蜜月・元農相汚職事件(上)
 「いやあ、大臣。本日はどうもー」。2018年11月12日、鶏卵生産大手「アキタフーズ」の秋田善祺元代表(87)=東京地検特捜部が贈賄罪で起訴=は鶏卵業界の重鎮らを引き連れ、農林水産省の大臣室を訪ねた。部屋で待っていた吉川貴盛元農相(70)=収賄罪で起訴=も「どうも、どうもー」と親しげに応じた。
 鶏卵業界は当時、欧州で盛んな「アニマルウェルフェア(動物福祉)」に基づく飼育方法が日本でも強いられないか、恐れを抱いていた。
 国際機関が2カ月前に示した止まり木や巣箱の義務化案は、狭いケージでの飼育が主流な日本の鶏卵業者にとって、鶏舎拡大など多額の出費につながりかねない。吉川元農相を訪ねたのは、農水省のトップに直接、国として案に反対するよう求めるためだった。
 「分かってますよ」と、にこやかに答えた吉川元農相。秋田元代表から現金200万円を受け取ったとされるのは、その9日後だ。

◆極秘名簿に「農水族」の議員ずらり 手帳には農水官僚の名

 秋田元代表は、売上高が400億円を超える業界2位のアキタ社を築き上げ、周囲には常々、「政治家が動いてくれないと物事は通らない」「政治家は俺に任せておけ」と語っていたとされる。
 政治家との幅広い交遊をうかがわせる資料が、社内で極秘に管理されていた「重要関係先名簿」だ。
 あいうえお順で政治家の名前がずらりと並び、農相経験者は吉川元農相を含め4人。昨年12月に内閣官房参与を突然辞任した西川公也元農相(78)の名前もある。秋田元代表は特捜部に「西川氏には1000万円超を渡した」と説明している。
 ほかにも複数の農水族議員がリストアップされ、アキタ社本社のある広島県の有力県議らも名を連ねる。
 本紙は名簿の国会議員に秋田元代表との関係を尋ねた。多くは「面識はあるが金銭の提供はない」としたが、自民党農林部会元部会長の野村哲郎参院議員(77)=鹿児島選挙区=側と同部会元副部会長の宮路拓馬衆院議員(41)=比例九州=側は、秋田元代表との現金のやりとりが一連の疑惑報道後に判明し、政治資金収支報告書を訂正したとした。

◆寄付、パーティー券、選挙で動員 照準合わせて取り込み

 野村氏は所属派閥の政治団体のパーティー券30万円分を買ってもらい、宮路氏は50万円の寄付を受けていたという。秋田元代表は自身の面会予定を手帳に記しており、資金提供があった日の欄には「野村先生会食」「宮路先生会食」とある。
 繰り返される「政治とカネ」の問題ー。広島県議の1人は「秋田さんは、この政治家に力があるとみるや、パーティー券の購入や寄付など金銭面で支援し、選挙も社員を動員して応援する。政治家を取り込もうとしていた」と明かす。
 ある自民党関係者はこう言い放った。「業界団体は、集票・集金組織として重要。中でも上客は、ずっとつなぎ留めておきたい存在だ。要望を受ければ、担当の官僚に『よろしくね』くらいは言うさ」。元代表の手帳には、農水官僚の名前も頻繁に登場していた。

 自民党衆院議員だった吉川元農相が15日、特捜部に収賄罪で在宅起訴された。周辺の取材を進めると、農政分野に強い「農水族議員」を巡る政官業の蜜月ぶりが見えてきた。癒着の背景を探る。全3回。

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