吉川元農相起訴 政治腐敗見逃さぬよう

2021年1月16日 07時49分
 農相在任中に五百万円の賄賂を受け取った−検察はそう認め、吉川貴盛元衆院議員を在宅起訴した。鶏卵業界と農水族との癒着にとどまらず、広く政治腐敗を見逃さぬよう検察力をふるってほしい。
 いわゆる「特捜検察」に期待されるのは二つだ。金融・証券市場の不正へのチェック、国会議員が絡んだ政治腐敗に対するチェックである。後者はロッキード事件やリクルート事件など検察の歴史で語られるが、近年は政界捜査が進まなかった。大阪地検の証拠改ざん事件という不祥事の影響もあったかもしれない。
 一昨年暮れにIR(カジノを含む統合型リゾート施設)をめぐる中堅議員の贈収賄事件があったが、国会議員の逮捕は十年ぶり。議員の職務にかかわる収賄罪では、二〇〇二年以来、十七年ぶりだった。大型汚職事件を契機に政治改革が進められたとはいえ、いかに政治腐敗への捜査が停滞していたかがうかがえる。
 その意味で今回は「大臣クラス」の不正を起訴に持ち込んだ意義はあろう。農相を務めた吉川被告と西川公也氏に鶏卵生産大手「アキタフーズ」グループの元代表から千数百万円ものカネが渡っていたとされる。
 そのうち吉川被告の農相在任中の五百万円についてのみ収賄罪に問うた。家畜を快適環境で飼育する国際基準の緩和、中小業者への公庫の貸し付け条件緩和を業界側は求めていたという。
 吉川被告は「大臣就任祝いと思った」などと説明したもようだが、特捜部は賄賂と判断した。
 西川氏は内閣官房参与で農業政策についての諮問に答える職務だったが、不問に付された。アキタ社の顧問も務め、その報酬の可能性もあったため、賄賂と認定するには至らなかったようだ。
 だが、鶏卵業界側が継続的に大臣クラスの政治家にカネを渡していたことは確かで、業界との癒着ぶりが明白となった。それを考えれば常に検察による政治のチェックは不可欠である。
 とくに今回の事件は、昨年七月に参院選広島選挙区を巡る河井克行元法相夫妻の買収事件の関係先として、アキタ社を家宅捜索。押収した出金記録などから現金提供の疑惑が浮上した。
 今後も公職選挙法や政治資金規正法などに反する事例があれば積極適用し、政界捜査の糸口にしてほしい。国民が望むのは何より「巨悪」の処罰である。それも検察は肝に銘じてもらいたい。

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