<ふくしまの10年・イチエフあの時 続く苦闘編>(10)「ピンハネ増えるだけ」

2021年1月16日 07時48分

作業員不足を解消するため、日当1万円アップなどを発表する東京電力の広瀬直己社長(当時)=2013年、東京・内幸町の東電本店で

 東電は事故前、技術や経験のある社に随意契約で仕事を発注していたが、事故後は福島第一原発(イチエフ)での事故収束コストを削ろうと、競争入札を拡大してきた。この影響や、政府の事故収束宣言でイチエフが「通常」の現場とされたことで、危険手当や日当の額が下がっていた。
 そんな中、東電の広瀬直己(なおみ)社長(当時)が一三年十一月八日の記者会見で、作業員への日当を一万円増額すると発表した。「除染の仕事に流れる方が多く、増額で安定的に人材を確保したい」と説明。会見で「元請けへの支払いを増額するとのことだが、中抜きされず、作業員に増額分がきちんと届くのか」と質問すると、広瀬氏は「この場で表明すれば、作業員の皆さんが上乗せを知る」と答えた。
 「実際にもらうまで分からないよ。少しでも増えればいいけど」と下請け作業員。別の作業員は「末端の俺たちに一万円が全部下りてくるわけじゃない。会社のピンハネ分が増えるだけ」。もともと独自に危険手当を払っている社もあったが、もらったことがない作業員もいた。
 競争入札で仕事が取れず、作業員を解雇する会社も出ていた。東電はこの日、こうした事情も踏まえ、作業に習熟した社に継続的に随意契約で発注することも表明。ある作業員は「作業が空いた時のつなぎの仕事や、作業員の被ばく線量が多くなった時のことも考えてくれないと雇用は安定しない」と語った。
 ◇次回は19日掲載予定です。
 ◇ご意見はfukushima10@tokyo-np.co.jpへ

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