鶏卵大手元代表の手帳に書かれた慰労会の記録 下座の官僚が見せつけられたのは…

2021年1月17日 06時00分
秋田元代表の手帳の写し。吉川元農相の大臣退任慰労会には農水官僚も参加していた(一部画像処理)

秋田元代表の手帳の写し。吉川元農相の大臣退任慰労会には農水官僚も参加していた(一部画像処理)

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<政官業の蜜月・元農相汚職事件(中)>
 2019年9月18日夜。1週間前に大臣を退任したばかりの吉川貴盛元農相(70)=東京地検特捜部が収賄罪で起訴=の姿は、東京都内の高級ホテルの料亭にあった。同じ農相経験者の西川公也氏(78)が主催した慰労会。吉川元農相は茶室を模した大座敷で、ほほ笑みながら杯を傾けていた。
 上座には元農相2人に加え、吉川元農相に500万円の賄賂を渡したとされる鶏卵生産大手「アキタフーズ」(広島県)の秋田善祺よしき元代表(87)=贈賄罪で起訴=らが並んだ。下座には、農林水産省で鶏卵を所管する幹部職員5人。秋田元代表は「政策を動かしているのは、あなた方だ」と官僚を持ち上げ、元農相2人と談笑を続けた。
 アキタ社関係者は「秋田元代表には、大臣との関係を官僚らに見せつけたい気持ちもあったはずだ。官僚の忖度そんたくが働くかもしれないから」と推察する。
 高級和菓子の土産も手にしたとされる官僚たち。5人とも本紙の取材に「出席した記憶がない」と口をつぐんだ。
 「費用は西川氏が負担した」(アキタ社関係者)という慰労会の予定は、秋田元代表の手帳に記録されている。手帳からは元代表が18~19年、農水省に部長や課長ら幹部職員を計約30回、訪ねていたこともうかがえる。
 慰労会に出席した職員の1人は、秋田元代表と省内でも面会したことを認め、鶏卵業界が懸念していた「アニマルウェルフェア(AW、動物福祉)」に基づく飼育方法について、「業界としての要望を伝えられたことがあった」と話した。
 AWの向上を目指す国際獣疫事務局(OIE、本部パリ)が、止まり木や巣箱の設置を義務づける案を示したのは18年9月だ。
 日本のケージ飼育を否定する案に鶏卵業界は猛反発。秋田元代表らが吉川元農相に同年11月に提出した要望書では「欧州のAW基準が鶏の苦痛の排除につながるか、科学的に証明されていない」「(ケージでの)衛生的な管理が優先されるべきだ」と訴えていた。
 農水省はその後、有識者らと協議会を開き、義務化案について意見交換した。委員を務めた天笠啓祐・日本消費者連盟顧問は「AWは国際社会の潮流だ。会議ではOIEの案に同調すべきだと発言したが、事務局の農水省側は『意見は記録しておきます』と言うだけ。真剣に議論する雰囲気はなかった」と振り返る。
 農水省は19年1月、義務化案に反対する意見をOIEに提出。その内容は、「科学的知見に基づき、止まり木や巣箱は任意事項に改めるべきだ」「衛生管理は非常に重要」などと、秋田元代表らの要望書と酷似していた。OIEは同年9月、義務化案を撤回した。
 当時の担当者は慰労会に出席していた職員で、「業界の要望を受けて方針を変えたわけではない」と強調する。だが、天笠氏は「まあ、出来レースだったんだろうね」と苦笑した。
 ある省庁の官僚はつぶやく。「与党の有力議員には、にらまれたくない。彼らに近い業者の案件は、どうしても丁重に扱おうという気持ちになってしまう」

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