Google「ニュースショーケース」の真の狙いは 記事の対価迫る報道機関を「分割統治」?

2021年1月17日 11時00分
 ネット市場寡占で競争を阻害しているとして、世界で規制強化が進む巨大プラットフォーム、米グーグル。掲載ニュースの対価支払いを求める報道機関との攻防も本格化している。グーグルは、記事使用料を支払う新たなサービスを持ち掛けるが、効果と狙いに懐疑的なメディアも多い。(小嶋麻友美)

◆各国で強まる政府・業界の圧力

 「この法律は到底、実行不可能だ」。昨年12月半ば、グーグルのオーストラリア法人トップのメル・シルバ氏は公式ブログで、ニュース記事の使用料を巡る同国の法案に反発した。審議中の法案は、検索で表示される記事の使用料について、報道機関との交渉を義務づける。表示順位を左右する検索アルゴリズムを変更する際は、報道機関に事前通知する規定も。グーグルは「報道機関の特別扱いだ」と修正を求めている。
 フランスでは政府が介入し、著作権に準じた記事の対価支払いを報道機関と協議するようプラットフォームに求めた。グーグルは異議を申し立てたが裁判所に退けられ、仏新聞協会との枠組み協議が大詰めだ。

◆検索「1強」で広告収入4倍に

 世界の検索の9割超を占めるグーグルは、検索利用者から集めた膨大なデータを使った広告ビジネスで稼ぐ。米司法当局によると、2019年の検索関連の広告収入は980億ドル(約10兆1000億円)。この10年で4倍になり、全収入の6割を占める。
 一方、報道機関の広告収入は激減。費用を負担せず記事を「ただ見せ」し、巨額の広告収入を得るプラットフォームに批判を強めている。各国政府も、民主主義を支えるジャーナリズムの弱体化や巨大プラットフォームによる寡占が競争を阻害する事態を重く見て、対応に乗り出している。グーグルが本社を置く米国では10月以降、反トラスト法の疑いで司法当局から計3件の訴訟を起こされた。

◆News Showcaseは「立法をないがしろに」

グーグルニュースショーケースの例。媒体ごとに記事が並ぶパネルが表示されるようになる=グーグルのウェブサイトより

 こうした中、グーグルが「質の高いコンテンツの対価を報道機関に支払う」と打ち出したサービスが「グーグルニュースショーケース」だ。ニュースアプリ上などで媒体ごとの記事表示画面が設けられ、報道機関が選んだ記事を並べられる。有料記事も載せられ、グーグル側は、報道機関と読者とが「関係を構築する道を開く」としている。
 既に英、独、仏、ブラジルなどの約400の報道機関が契約したが、法律に基づく一律の対応を阻むための「分割統治」(独ニュースサイト・ネッツポリティック)などと、その戦略に批判的な見方も強い。
 欧州主要メディアで構成する「欧州出版評議会」のアンジェラ・ミルスウェイド専務理事は「グーグルは『ニュース制作への支援』を主張しながら、自前のサービスで取引条件を一方的に押しつけ、公平な交渉条件を設定しようとする立法をないがしろにできる」と指摘した。

◆遅れる日本の対応

 日本でも今春、巨大プラットフォームの取引や運営の透明化を目指す法律が施行される。日本新聞協会は意見書で、デジタル広告の取引やグーグルの検索アルゴリズムの透明性確保を求めたが、記事の対価については明確な対応を打ち出せていない。グーグルはニュースショーケースの導入を目指し、国内報道機関に個別に参加を打診している。

 デジタルプラットフォーム 事業者と不特定多数の利用者が、商品や情報、サービスのやりとりをするオンラインの場。GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)と呼ばれる巨大IT企業のほか、日本ではヤフーや楽天などが代表的。デジタルの流通を差配する事実上の「門番」となっており、公正性や透明性の問題が各国で議論されている。

 検索アルゴリズム プラットフォームが検索結果を表示する際に、取り上げるウェブページの順位付けを決める計算方法。グーグルによると、検索ワードやページの関連性、専門性、ユーザーの位置情報などを組み合わせて定めている。グーグルは年に数回、アルゴリズムの大規模な変更を行っているが、その内容は明らかにしない。

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