<ヒューマンいばらき>職人魂込めた里美産 ひたちおおたチーズ工房製造責任者 平賀優子(ひらが・ゆうこ)さん(46)

2021年1月17日 07時28分

工房で作ったチーズを手にする平賀優子さん=常陸太田市で

 酪農が盛んな常陸太田市里美地区の生乳を使ったチーズの加工所「ひたちおおたチーズ工房」(同市大中町)の製造責任者を務める。つきたてのお餅のような「モッツァレラ」、焼いて食べる「カチョカヴァッロ」…。新鮮で高品質なチーズは、水戸市の有名ホテルのレストランでも取り扱われている。
 群馬県桐生市出身。都内で立ち上げた広告会社を切り盛りしていたが、四半世紀に及ぶ都会生活に疲れていた。そんな時に偶然、テレビの特集で地域おこし協力隊が紹介されていた。ネットで調べてみると、チーズの製造・商品化を目指す常陸太田市が職人候補を募集していた。チーズ作りの経験はなかったが、新しいことを始めるチャンスだと思った。
 二〇一八年、チーズ製造の地域おこし協力隊員に採用された。東京で生まれ育った当時十代の娘二人を説得し、三人そろって常陸太田市に移住した。それまで好んでは食べなかった米が驚くほどおいしく、田んぼが広がるのどかな景色も気に入った。
 チーズ職人への道は、北海道や栃木県のチーズ工房での研修からスタートした。気温や材料などの条件に左右されやすいチーズ作りに確立した方法はなく、教科書もない。自分で一から試行錯誤を重ねるしかなかった。
 常陸太田市に戻ってからも試作品作りに没頭した。ホエー(固まらなかった牛乳の水分)の抜き加減や、お湯の中で練るタイミングなどを少しずつ変え、感覚をつかんだ。モッツァレラは固さや弾力の好みが人それぞれで違うだけに、多くの人に好まれるような食感も模索した。
 旧給食センターを改修し、工房を開いたのは昨年五月。新型コロナウイルスの感染拡大で一カ月遅れ、お披露目会も中止した。地元の道の駅に並んだチーズを見て、「売り始めた」と実感が湧いたが、感慨にふける余裕はなかった。
 近年は、国産チーズが本場欧州での国際コンクールで上位入賞することも珍しくない。それでも、新鮮なチーズを広く知って食べてもらうことにこだわる。里美地区では一年中、安定した品質の生乳が手に入る。
 「牛乳のおいしさに助けられている。世界で賞を取るよりも、おいしいものを作りたい」。そう話す顔は、チーズ職人そのものだった。 (保坂千裕)
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 四種類のチーズを製造し、「道の駅ひたちおおた」で販売している。問い合わせは、ひたちおおたチーズ工房=電0294(82)2329=へ。

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