「コロナ以外の救急、もう手いっぱい」病院内ルポ 優先順位付け、患者のたらい回しも

2021年1月17日 19時22分
 新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない中、急増する感染患者への対応が追いつかず、その他の病気の患者の救急医療に手が回らない医療機関が増えている。千葉県では16日時点で治療が必要なコロナ患者のうち、実際に入院できた人は約12.5%にとどまる。県内の医療現場からは「コロナ診療と救急医療は既に破綻している」と切迫した声が上がる。

保健所からの情報を元に患者の受け入れを検討する看護師ら(画像の一部を加工しています)

◆年齢や基礎疾患が判断材料

 「入院調整中の人は、救急搬送での入院が必要な人がほとんどなんですね」。14日午前、千葉大医学部付属病院(千葉市中央区)感染制御部の一室。看護師長は、電話口の千葉市保健所の担当者との間で、前日に判明した約100人近い感染者の状況の確認に追われていた。
 「この人は呼吸疾患がある」「発症から5~7日たっているのが気になる」。優先的に治療が必要な人の症状などを看護師長がホワイトボードに書き込み、どの患者の受け入れが可能かを検討した際、横にいた猪狩英俊部長の携帯電話が鳴った。別の症状で外来に診察に来た患者を念のため検査したところ、コロナ陽性が確認されたとの一報だった。
 猪狩部長は、ホワイトボードに目をやると「年齢か基礎疾患か、何を優先するべきか」とつぶやき、他部署との調整に向かった。

集中治療室で新型コロナウイルスに感染した重症患者(中)を治療する看護師ら(画像の一部を加工しています、千葉大医学部付属病院提供)

 同病院が計画するコロナ専用病床は、県内で最大級の60床。15日正午時点の受け入れ患者は25人だが、いずれも中等症以上で症状が悪化しやすく、看護師の人手が不足しがちだ。特に集中治療室(ICU)では、人工呼吸器などが必要な重症患者用の病床5床は満床が続いており、近く8床に拡充する。
 ICUでは、コロナ患者1人に看護師2~3人が対応する必要がある。同病院では、コロナ重症者用病床の拡充のため、現在66人いるICUの看護師を100人に増やす代わりに、救急科の14床を4~5床まで減らすという。

◆「すべての病院が役割を果たす体制を」

 冬季は心筋梗塞や脳卒中による救急搬送が増えるが、同病院ではコロナ患者以外の救急患者の受け入れを断るケースが増えた。県内の他の病院も同様の状況といい、横手幸太郎病院長は「コロナも救急もたらい回しが始まっており、救える命を救えなくなる状況は目前に迫っている」と危機感をあらわにした。
 県内でコロナ診療を行う医療機関の中には、院内感染対策などを理由に専用病床を数床程度に限定する病院もあり、患者の受け入れ状況には病院ごとに偏りがある。横手病院長は「コロナ診療ができなくても、その他の救急患者を受け入れたり、回復期のコロナ患者を受け入れるなど、すべての病院が役割を果たす体制が必要だ」と訴える。(太田理英子)

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