「復興は国の責務」の文言が消える 被災した福島の将来像 有識者会議で改定議論

2021年1月18日 06時00分
 東京電力福島第一原発事故で被災した福島県内の市町村の将来像を示すため、政府の有識者会議が改定する提言の概要案から、前回(2015年)提言にあった「復興・再生は国の責務」との文言が消えたことが分かった。菅政権は発足時に定めた内閣基本方針に東日本大震災や原発事故の対応を盛り込まず、批判を浴びた。震災から10年の節目が3月に迫る中、政権内で復興の重要性が風化している懸念もあり、福島県側は「国の責務」を今回も明記するよう求めている。
 「福島12市町村の将来像に関する有識者検討会」は、日本学術会議元会長の大西隆・東大名誉教授が座長を務め、識者らが原発周辺の田村市、南相馬市、川俣町、広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、飯舘村の計12市町村の30~40年後の姿を話し合う。15年にまとめた最初の提言から5年が過ぎ、20年度中の改定を目指して議論を進めている。
 概要案は、福島側の自治体関係者らも参加した昨年11月の会合で復興庁が示した。将来像について「世界に誇れる創造的復興を成し遂げ(中略)他地域の課題解決や地域の持続可能性の向上に貢献し、社会問題に取り組む先進地域を目指す」などと記した。一方で前回盛り込んだ「復興・再生させることは国の責務」の文言はなかった。
 会合では、福島県の井出孝利副知事が「国の責務」について「提言本文の総論などに明確に記載し、全体に浸透させてほしい」と要望。市町村からも「国には財政面、人材面で長期的な支援をお願いしたい」などの声が上がった。
 概要案を作成した復興庁担当者は本紙の取材に意図的な削除を否定。「そこまでのもの(文言)を含めての議論はなかった。提言本文を書く時に意見を聞きながら対応する」と話した。
 大西座長は文書で「今回の案をたたき台とすることについて座長として了解した」と回答。「福島の復興・再生に関する特別措置法や基本方針によって、国に責務があることは明確で、有識者検討会の考えも変わらない。提言本文にはこれまでのように『国の責務』を書き込むことになると思う」と見通しを示した。(中根政人)

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