<ひと物語>熊谷名物目指し奮闘 ホンモロコの養殖・柿沼賢さん

2021年1月18日 07時42分

「ホンモロコの食文化を継承したい」と話す柿沼さん=いずれも熊谷市で

 「ホンモロコを熊谷の名物にして、小魚の食文化を継承していきたい」−。赤い鉢巻きがトレードマークの柿沼賢(さとる)さん(37)は、ホンモロコの養殖に込める思いをこう話した。
 ホンモロコは元々、琵琶湖固有の淡水魚。その淡泊な味わいが京都など関西方面で好まれ、全国へと広がっていったとされる。アユに味が近い高級魚として珍重され、「川魚のダイヤモンド」とも称される。
 県内でも多く養殖され、「彩のもろこ」としてブランド化されている。「夏の稚アユ、冬のホンモロコと言われるほどの美味が最大の魅力」と柿沼さん。「頭から尻尾まで丸ごと食べられて栄養満点。お酒のつまみにも最適です」
 専門学校を卒業後は生花店などで働いていたが、二〇一二年に父親から家業を継いでホンモロコの養殖を始めた。「魚の養殖に興味はあったが、何も分からなかった」と振り返る通り、当初はふ化や稚魚の放流で失敗が続いた。日よけと水質保全のためにホテイ草を植えたところ、生い茂りすぎて養殖池が酸欠状態になったこともあった。

ホンモロコの養殖池

 ホンモロコは四月下旬に産卵し、五月上旬にふ化する。九月下旬までに体長七〜八センチにまで育て、成魚の販売は十月〜翌年二月。アユにも似た香りを損なわないよう、熊谷の地下水を使った養殖池の水質に気を使い、泥抜きなどのそうじを怠らない。水を汚さないためには小魚の粉末を配合したエサを与え過ぎないことも大切。ヤギを放し飼いにして養殖池の周りの雑草を食べさせ、除草剤も使わない徹底ぶりだ。
 近年は食生活の変化が進み、魚が食卓に並ぶ機会が減っている。子どものころから煮つけや甘露煮で小魚に親しんできた人たちの高齢化も進む。
 煮ても焼いても、揚げてもおいしいホンモロコだが、柿沼さんは「昔と違って今はおいしくて栄養豊富な食材がたくさんある。魚の場合、料理にかかる手間も避けられてしまう理由ではないか」とみる。
 もっと気軽に食べてもらい、ホンモロコの味を知ってもらおうと、鮮魚としての小売りだけでなく、薫製や唐揚げなど加工品を開発。祭りなどイベントにも出店している。また、夏の強い日差しを避けるために養殖池に植えたハスを利用し、秋には希望者にレンコン掘りを楽しんでもらっている。
 「若い人たちにもっとホンモロコの味を知ってもらいたい」。その一心で努力を続けている。 (渡部穣)
<かきぬま・さとる> 2012年から父親の仕事を継いで「柿沼養魚場」(熊谷市上中条)でホンモロコを養殖。18年の「第3回熊谷発ビジネスプランコンテスト」でものつくり大賞受賞。養魚場は平日が午前9時〜正午、土日祝日が午前9時〜午後4時の営業。ホンモロコは1匹40円からで、100グラム500円、300グラム1200円など。

関連キーワード

PR情報

埼玉の新着

記事一覧