菅首相、施政方針演説全文「安心と希望に満ちた社会を実現」

2021年1月18日 14時49分

◆2 東日本大震災からの復興、災害対策

(東日本大震災からの復興)
 3月11日で、あの東日本大震災から10年となります。改めて、犠牲となられた多くの方々のご冥福をお祈りし、被災された全ての方々に、心からお見舞い申し上げます。
 心のケアなどのきめ細やかな取組を継続するとともに、原発事故で大きな被害を受けた福島においては、「創造的復興の中核拠点」となる国際教育研究拠点を設立します。原災地域12市町村に魅力ある働く場をつくり、移住の推進を支援します。
 福島の本格的な復興・再生、そして東北復興の総仕上げに、全力を尽くしてまいります。
(災害対策・国土強靭化)
 震災の経験も教訓とし、さらに、ここ数年の相次ぐ水害やこの冬の大雪、災害の激甚化の中で、災害発生時には、万全な対応を速やかに行います。防災・減災、国土強靭化についてもしっかりと進めます。5年集中で、事業規模15兆円を目途に対策を実施します。
 大雨予測の精緻化、遊水地や貯留施設の整備、ダムの事前放流、土地利用の見直しなど、ハードとソフトの対策により住民の命を守ります。
(暮らしの安全・安心) 
 暮らしの安全・安心を確保します。ストーカー規制法を改正し、違反行為をGPSによる位置情報の取得にも広げます。銃刀法を改正し、クロスボウの所持を禁止し、許可制とします。
 ネット通販トラブルの増加を踏まえ、デジタルプラットフォーム企業に対し、違法商品、危険商品の出品停止を求めます。SNSの誹謗中傷について、発信者情報の開示命令などの裁判手続を整備し、被害者の迅速な救済につなげます。

◆3 我が国の長年の課題に答えを

 国民の皆さんの「希望」を実現したい。そうした思いで、我が国の長年の課題に答えを出してまいります。
 バブル崩壊後、我が国が抱える問題について、長年にわたって、次のように言われ続けてきました。「日本企業のダイナミズムが失われた」、「デジタル化の流れに乗り遅れ、新たな成長の原動力となる産業が見当たらない」。
 アベノミクスの「3本の矢」により、日本経済はバブル期以来の好調を取り戻しました。しかしながら、ポストコロナの時代においても、我が国経済が再び成長し、世界をリードしていくためには、多くの壁が立ちはだかっています。
 行政の縦割り、既得権益、そして悪しき前例主義を打ち破り、未来を切り拓いていく。困難な課題にも答えを出していくのが、私の内閣です。
 地方で、家族を育み、老いても安心して暮らせるよう、地方の方々の所得を引き上げる施策を追求してまいります。そうした動きを国全体の活性化につなげ、我が国が持続的に発展していくため、成長志向の政策運営を続けます。
 高齢者をはじめ、誰もが安心できる社会保障制度をつくり、未来を担う子どもたちや若者のための政策を進めます。
 まずは、次の成長の原動力をつくり出します。それが、「グリーン」と「デジタル」です。
(グリーン社会の実現)
 2050年カーボンニュートラルを宣言しました。もはや環境対策は経済の制約ではなく、社会経済を大きく変革し、投資を促し、生産性を向上させ、産業構造の大転換と力強い成長を生み出す、その鍵となるものです。まずは、政府が環境投資で大胆な一歩を踏み出します。
 過去に例のない2兆円の基金を創設し、過去最高水準の最大10%の税額控除を行います。次世代太陽光発電、低コストの蓄電池、カーボンリサイクルなど、野心的イノベーションに挑戦する企業を、腰を据えて支援することで、最先端技術の開発・実用化を加速させます。
 水素や、洋上風力など再生可能エネルギーを思い切って拡充し、送電線を増強します。デジタル技術によりダムの発電を効率的に行います。安全最優先で原子力政策を進め、安定的なエネルギー供給を確立します。2035年までに、新車販売で電動車100%を実現いたします。
 成長につながるカーボンプライシングにも取り組んでまいります。先行的な脱炭素地域を創出するなど、脱炭素に向けたあらゆる主体の取組の裾野を広げていきます。CO2吸収サイクルの早い森づくりを進めます。
 世界的な流れを力に、民間企業に眠る240兆円の現預金、さらには3000兆円とも言われる海外の環境投資を呼び込みます。そのための金融市場の枠組みもつくります。
 グリーン成長戦略を実現することで、2050年には年額190兆円の経済効果と大きな雇用創出が見込まれます。世界に先駆けて、脱炭素社会を実現してまいります。
(デジタル改革)
 この秋、デジタル庁が始動します。
 デジタル庁の創設は、改革の象徴であり、組織の縦割りを排し、強力な権能と初年度は3000億円の予算を持った司令塔として、国全体のデジタル化を主導します。
 1兆円規模の緊急対策として改革に着手し、全国規模のクラウド移行に向け、今後5年間で自治体のシステムも統一、標準化を進め、業務の効率化と住民サービスの向上を徹底してまいります。
 マイナンバーカードの普及のため、マイナポイントの期限も半年間延長します。この3月には健康保険証との一体化をスタートし、4年後には運転免許証との一体化を開始します。
 行政機関が保有する法人などの登録データをシステム上の、いわゆるベースレジストリとして整備し、デジタル社会の形成に不可欠なデータ利活用を進めてまいります。
 組織の要は人です。公務員の採用枠にデジタル職の創設を検討し、高度なスキルを持つ民間人材を迎え、自治体、民間とも行き来させ、官民のデジタル化をダイナミックに進めます。
 教育のデジタル化も一挙に進めます。小中学生に1人1台のIT端末を揃え、9000人のデジタル専門家がサポートします。子どもたちの希望や発達段階に応じたオンライン教育を、早期に実行してまいります。
 あらゆる手続が役所に行かなくてもオンラインでできる、引っ越した場合の住所変更がワンストップでできる、そうした仕組みをつくります。
高齢者や障害者、デジタルツールに不慣れな方々もしっかりサポートし、誰もが、デジタル化の恩恵を最大限に享受できる社会をつくり上げてまいります。
 民間企業においても、社内ソフトウェアから生産、流通、販売に至るまで、企業全体で取り組むデジタル投資を、税制によって支援します。
 ポスト5G、6Gを巡る国際競争が過熱化する中、官民を挙げて研究開発を進め、通信規格の国際ルールづくりを主導し、フロントランナーを目指します。
 さらに、身近な情報通信の利用環境を、国民目線に立って変えていきます。
 携帯電話料金については、大手が相次いで、従来の半額以下となる大容量プランを発表し、本格的な競争に向けて、大きな節目を迎えました。
放送番組と同じ内容をインターネットでも同時に視聴できるよう、著作権法を改正します。
 NHKについては、業務の抜本的効率化を進め、国民負担の軽減に向け放送法の改正をします。これにより、事業規模の1割に当たる700億円を充て、月額で1割を超える思い切った受信料の引下げにつなげます。
(イノベーション)
 はやぶさ2のカプセルの帰還に、世界が湧き立ちました。高い技術力により世界初の偉業の数々を成し遂げた、歴史的成果です。子どもから大人まで夢や希望を与えてくれた、津田先生をはじめJAXAの皆さんに、心からの敬意を表します。
 科学技術立国・日本にとって、20年近くも続く研究力の低迷は、国の将来を左右する深刻な事態です。博士課程学生の支援を拡大し、未来を担う若手研究者を育成します。
 10兆円規模の大学ファンドにより、若手研究人材育成などの基盤整備を行い、世界トップレベルの成果を上げる自律した大学経営を促します。
 こうした取組により、今後5年間の目標として、政府の研究開発予算を30兆円、官民の研究開発費の総額を120兆円とし、積極的にイノベーションを促してまいります。
 2025年大阪・関西万博では、我が国が誇る先端技術の粋を集め、いのち輝く未来社会のデザインを世界に示し、日本が大きな飛躍を遂げるきっかけといたします。
(我が国企業の成長)
 我が国企業が、過去の成功体験にとらわれず、未開拓の分野に進出し、次の成長の担い手として中小企業、・ベンチャー企業が育っていく。こうした環境をつくり出すことも、長年の課題でした。
 雇用の7割を支える中小企業を取り巻く状況は非常に厳しく、資金繰り支援を続けます。持続化補助金や手形払いの慣行の見直しを通じて、生産性の底上げを図り、賃金の上昇へとつなげます。さらに、中堅企業への成長、海外市場への挑戦を後押ししてまいります。
 最低賃金は、雇用にも配慮しながら継続的な引上げを図り、経済の好循環につなげてまいります。
 業種を超えた再就職や在籍型出向を支援し、デジタル教育訓練を強化し、新しい分野への移動を促します。
 コーポレートガバナンス改革を進め、我が国企業の価値を高めてまいります。我が国を代表する企業の役員の3分の1以上を独立社外取締役とし、女性、外国人、中途採用者の管理職への登用について目標の公表を求めることとします。
(国際金融拠点)
 国際金融センターをつくることも、長い間言われてきたことです。日本には、良好な治安と生活環境、1900兆円の個人金融資産といった大きな潜在性があり、金融を突破口としてビジネスを行う場としても魅力的な国を目指します。
 税制について、外国人の国外財産を相続税の対象外とし、運用成果に応じた収入にかかる所得税は、主要先進国と比べて遜色ない水準である20%の税率を一律に適用します。海外の人材がビジネスを容易に開始できるよう、在留資格の特例も設けます。

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