菅首相、施政方針演説全文「安心と希望に満ちた社会を実現」

2021年1月18日 14時49分

◆6 外交・安全保障

(多国間主義)
 我が国は、多国間主義を重視し、国際社会が直面する課題に共に取り組む「団結した世界」の実現を目指します。ポストコロナの国際秩序づくりに指導力を発揮していく決意です。
 COP26(国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議)までに、意欲的な2030年目標を表明し、各国との連携を深めながら、世界の脱炭素化を前進させます。
 デジタル時代の「信頼性のある自由なデータ流通」のためのルールづくりを加速化させるとともに、WTO(世界貿易機関)の改革を推進します。
 RCEP(地域的な包括的経済連携)の進展や日英包括的経済連携協定(EPA)の発効は、自由で公正な経済秩序の構築に貢献しました。TPP(環太平洋連携協定)についても、本年の議長国として、その着実な実施と拡大に向けた議論を主導してまいります。
(日米同盟と「自由で開かれたインド太平洋」)
 日米同盟は、我が国外交・安全保障の基軸であり、インド太平洋地域、さらには国際社会の自由、平和、繁栄の基盤です。バイデン次期大統領と早い時期にお会いし、日米の結束をさらに強固にします。そして、新型コロナ、気候変動などの共通課題で緊密に協力してまいります。
 同時に、日米の抑止力を維持しつつ、沖縄の皆さんの心に寄り添い、基地負担軽減に引き続き取り組みます。普天間飛行場の1日も早い全面返還を目指し、辺野古沖への移設工事を進めます。
 世界の活力の中心であるインド太平洋地域では、法の支配に基づく自由で開かれた秩序の形成が極めて重要です。米国をはじめ、ASEAN、豪州、インド、欧州などとの協力を深化させつつ、より多くの国・地域と共に「自由で開かれたインド太平洋」の実現に取り組んでまいります。
(我が国防衛と経済安全保障)
 厳しさを増す安全保障環境の中で、我が国の領土、領海、領空、そして国民の命と平和な暮らしを守り抜くことは、最も重い使命です。ミサイルの脅威に対応するため、イージス・システム搭載艦を整備するとともに、抑止力の強化について、引き続き、政府内で検討を行います。
 経済安全保障の確保に、政府一丸となって取り組みます。安全保障上重要な防衛施設や国境離島を含め、国土の不適切な所有、利用を防ぐための新法を制定します。
(近隣外交)
 政権の最重要課題である拉致問題については、私自らが先頭に立ち、米国を含む関係国と緊密に連携しつつ、全力を尽くします。金正恩委員長と条件を付けずに直接向き合う決意に変わりはなく、日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、国交正常化を目指します。
 安定した日中関係は、両国のみならず、地域、国際社会のためにも重要です。両国には様々な懸案が存在しますが、ハイレベルの機会も活用しつつ、主張すべきは主張し、具体的な行動を強く求めていきます。その上で、共通の諸課題の解決に向けて連携してまいります。
 北方領土問題を次世代に先送りせず、終止符を打たねばなりません。2018年のシンガポールでの首脳会談のやり取りは引き継いでおり、これまでの両国間の諸合意を踏まえて交渉を進めます。平和条約締結を含む日露関係全体の発展を目指してまいります。
 ASEANは、戦略的パートナーであり、かけがえのない友人です。就任後の最初の訪問先をベトナムとインドネシアとしたのも、そうした考えからです。ASEANとの間で、今後とも、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた協力をさらに進めてまいります。
 韓国は重要な隣国です。現在、両国の関係は非常に厳しい状況にあります。健全な関係に戻すためにも、我が国の一貫した立場に基づき、韓国側に適切な対応を強く求めていきます。

◆7 おわりに

 憲法は、国の礎であり、そのあるべき姿を最終的に決めるのは、主権者である国民の皆様です。国民から負託を受けた政治家がその責任に正面から向き合い、与野党の枠を超えて憲法審査会の場で議論を深め、国民的な議論につなげていくことを期待します。
 安定的な皇位の継承などに関する課題については、衆参両院の委員会で可決された附帯決議の趣旨を尊重し、対応してまいります。
 夏の東京オリンピック・パラリンピックは、人類が新型コロナウィルスに打ち勝った証として、また、東日本大震災からの復興を世界に発信する機会としたいと思います。感染対策を万全なものとし、世界中に希望と勇気をお届けできる大会を実現するとの決意の下、準備を進めてまいります。
 まずは、1日も早く感染を収束させ、皆さんが安心して暮らせる日常、そして、にぎわいのある街角を取り戻すため、全力を尽くします。
 未来への希望を切り拓くため、長年の課題について、この4カ月間で答えを出してきました。皆さんに我が国の将来の絵姿を具体的に示しながら、スピード感を持って実現してまいります。
 1人ひとりが力を最大限発揮し、互いに支え、助け合える、「安心」と「希望」に満ちた社会を実現します。
 こうした社会を実現するためには、国民の信託を受け、国政を預かる立場にある政治家にとって、何よりも国民の皆様の信頼が不可欠であります。先の国会における「桜を見る会」前夜の夕食会に関する私の答弁の中に、事実と異なるものがあったことについて、大変申し訳なく、改めてお詫び申し上げます。
 私は、47歳で初めて衆議院議員に当選したとき、かねてよりご指導いただいていた当時の梶山静六内閣官房長官から、2つのことを言われ、以来、それを私の信条としてきました。
 1つは、今後は右肩上がりの高度経済成長時代と違って、少子高齢化と人口減少が進み、経済はデフレとなる。お前はそういう大変な時代に政治家になった。その中で国民に負担をお願いする政策も必要になる。その必要性を国民に説明し、理解してもらわなければならない。
 もう1つは、日本は、戦後の荒廃から国民の努力と政策でここまで経済発展を遂げてきた。しかし、資源の乏しい日本にとって、これからがまさに正念場となる。国民の食い扶持をつくっていくのがお前の仕事だ。
 これらの言葉を胸に、「国民のために働く内閣」として、全力を尽くしてまいります。
 ご清聴ありがとうございました。
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