「経済成長」「観光立国」宣言するも…コロナ収束への展望は?<菅首相の施政方針演説>

2021年1月19日 06時00分
 コロナ禍が収まらず、政府が11都府県に緊急事態宣言を出し「医療崩壊」の懸念も強まる中で菅義偉首相が行った施政方針演説。いつまでの宣言解除を目指し、収束への道筋をどう描いているのかという展望を、首相が口にすることはなかった。相対的に「経済の成長」や「観光立国」など、収束を前提にした政策に力点を置いた印象が強く、国民の疑問に答えたとは言い難い。(井上峻輔)

◆見通し説明せず願望を語るだけ

 首相は演説の冒頭で「深刻な状況にある新型コロナを1日も早く収束させる」と強調。「いま一度、国民の協力をいただきながら難局を乗り越えていく」とも訴え、まずコロナ対策から語り始めた。
 だが、対策の内容は飲食店の営業時間短縮、テレワークの7割実施など、宣言の再発令時に言及した項目ばかりだった。
 国民の関心が高い緊急事態宣言の解除の見通しは明確に説明せず「ステージ4」から早急に脱却したいと話すにとどめた。現在の宣言期間である2月7日までの解除は困難との見方が専門家からも出ている中で「1日も早く」「早急に」との言葉に説得力を持たせる根拠は見当たらなかった。

◆医療体制も具体策ほとんどなし

 逼迫する医療提供体制についても「あらゆる方策を尽くし、医療体制の確保を強力に進めていく」と決意を披露したものの、具体策は「病床1床当たり、最大1950万円を助成」という発表済みの対策のみ。時短要請に応じた飲食店への対策でも、懸案である納入、生産など関連業種への支援に言及しなかった。
 約45分間の演説のうち、コロナ対策は8分ほど。衆院本会議場では、首相がテーマを東日本大震災からの復興に移すと、野党席から「これで終わり?」とヤジが飛んだ。

◆方針転換示さず抽象的な言葉並ぶ

 昨年10月の臨時国会での所信表明演説で「爆発的な感染は絶対に防ぎ、社会経済活動を再開して経済を回復する」と力説した首相。約3カ月で感染は拡大し、今回は「コロナ対策と経済の両立」の表現が消えた。
 とはいえ、両立から転換したとも言わず、言葉の端々から経済重視の思いがにじみ出た。「ポストコロナの時代においても、わが国経済が再び成長し、世界をリードしていく」との言葉が象徴的だ。

第204通常国会が召集され、菅首相が就任後初めて施政方針演説をした衆院本会議

 停止を余儀なくされている政府の観光支援策「GoToトラベル」にこそ触れなかったものの「コロナを克服した上で世界の観光大国を再び目指す」と明言。東京五輪・パラリンピックの開催にも意欲を示し「人類がコロナに打ち勝った証し」と位置づけた。

◆感染どう制御していくか分からず

 政府関係者は演説に込めた首相の思いについて「首相として経済にも目配りするのは当然だ」と説明する。
演説の締めくくりに、若手時代に政治の師と仰ぐ梶山静六元官房長官から「国民に負担をお願いする政策も必要」と言われた経験に触れ「私の信条」と語った首相。野党は20日からの各党代表質問でコロナ対策を集中的に取り上げる見通しで、立憲民主党の福山哲郎幹事長は記者団に「なぜ医療が逼迫したのか、どう克服するかの説明が全くなかった。説明をせず、協力だけ求められても国民は納得できない」と指摘した。

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