首相施政方針 危機克服の決意見えぬ

2021年1月19日 08時06分
 通常国会が召集された。新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、緊急事態宣言の最中である。喫緊の課題は感染抑止だが、菅義偉首相の施政方針演説から危機克服の決意を感じ取るのは難しい。
 昨年九月に就任した菅首相には初の施政方針演説だ。内政、外交全般にわたる政策の方向性を国民を代表する国会に説明する機会だが、国民の関心がこの危機をどう克服するかに集まるのはやむを得まい。しかし、演説はどれだけ国民の胸に響いただろうか。
 首相は演説冒頭、新型コロナ感染症が「わが国でも深刻な状況にある」として「一日も早く収束させる」との決意を述べ、午後八時以降の外出自粛要請など、緊急事態宣言に伴う対策に言及した。
 首相が今、国民に問われているのは、感染を抑える自身の決意と具体策のはずだが、演説からは、そのいずれも読み取れなかった。
 共同通信世論調査では政府のコロナ対応を「評価しない」は68・3%に上る。評価が低い従来の取り組みを並べ立てても、国民に安心感を与えることはできない。
 そもそも首相が政府のコロナ対応について、国民に説明を尽くそうとしているのか、甚だ疑問だ。
 政府が緊急事態宣言の発令方針を報告した衆参両院の議院運営委員会には、野党側の求めにもかかわらず、首相は出席しなかった。記者会見は何度かしたものの、出席できる記者や質問数は限られ、事務方が「次の日程がある」として途中で打ち切るのが常だ。
 危機に際し、国民の負託を受けた指導者が対応の陣頭に立つべきは当然だが、強気で臨み、強い言葉を語ればいいわけではない。必要なのは、危機を乗り越えるために国民から理解と共感が得られるような誠実な態度と言葉だ。
 演説から首相の持論である「自助」を強調する文言が消え、「互いに支え、助け合える『安心』と『希望』に満ちた社会の実現を目指す」としたことは評価したい。
 そうした社会の実現には首相自身が指摘するように政治への国民の信頼が不可欠だ。
 首相は演説で安倍晋三前首相を擁護した「桜を見る会」前日夕食会を巡る自身の虚偽答弁は謝罪したが、元農相、吉川貴盛被告の収賄事件や河井克行、案里両被告の選挙違反事件などへの言及はなかった。
 コロナ対策の実を挙げるためにも政治への信頼回復は引き続き重要な課題だ。「政治とカネ」を巡る一連の事件の真相解明と再発防止にも力を注ぐべきである。

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